みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#22では、2005年当時のみずほフィナンシャルグループ社長だった前田晃伸氏のインタビューをお届けする。

「みずほ統合から3年。旧行意識はなくなったのか」という編集部の問いに対し、「旧行意識なんて言葉は久しぶりに聞いた」と前田氏は答えている。しかし、その旧行意識を要因の一つとするみずほのシステム障害があと2回続くことを知っている現代の私たちには、その言葉はあまりに空虚に響く。

「週刊ダイヤモンド」2005年8月13日号特集「みずほ復活は本物か?」を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

旧行意識はもはやない
トップへの情報遮断が大敵だ

●前田晃伸(みずほフィナンシャルグループ社長)

みずほFG社長「旧行意識はもはやない」の空虚、2度目のシステム障害のはるか前に宣言Photo by Daisuke Aikawa

――(2006年3月期)第1四半期決算は、中間期の当期利益予想を2700億円と、500億円上方修正するなど、好調だった。

 過去、不良債権を集中的に処理してきたため、財務面での懸念はなくなった。しかし、日本経済はまだデフレが続いており、決してみずほは復活した、と言える状況ではない。システム統合もようやく終えたので、これからはマーケティング力で差をつけて、収益力を増していける環境が整ったと考えている。

――グループ外の企業との業務提携を矢継ぎ早に打ち出している。

 みずほは日本の上場企業の7割と取引があるが、日本全体を押さえているわけではないから、守りに入れば負ける。

 これからも、法人、個人ともに事業ごとに強みを持つパートナーと提携することで、そのマーケットでのトップを目指していく。ヘタに強い相手と提携すると、顧客を取られる、という声も聞こえてくるが、そもそも守るほどのものは持っていないのだから、取られるものなどなにもない。そう考えたほうが、もっと強くなれる。

――グローバルで時価総額トップ5の銀行になると宣言しているが。

 公的資金を2年以内に返済し、格付けはダブルAを目指したい。公的資金の返済は自力で可能だが、格付けはあくまでも願望にすぎない。しかし、今までは先が見えなかったから、ダブルAを目指そう、とすら言えなかった。ようやく、そう言える状況になったということだ。

 また、時価総額も現在の6兆円から10兆円に引き上げたいが、10兆円という数字そのものには意味がない。ウチが10兆円にできても、ほかが3倍になる可能性だってあるのだから。公的資金の返済など、やるべきことを1つひとつこなしていくだけだ。

――公的資金の返済には自信があるのか。

 今の株価水準なら問題ない。剰余金もすでにある。ただ、これからも予定どおり収益を積み上げていかないと、返済したら自己資本がなくなってしまう。

――みずほ統合から3年。旧行意識はなくなったのか。

 旧行意識なんて言葉は久しぶりに聞いた。顔に旧行マークが付いているわけでもないし、2万人以上も社員がいれば、いちいちわかるわけがない。僕も「あなたはどこの出身?」なんて聞いたことは一度もない。

――しかし、いまだに旧3行のバランス人事が続いているし、行員からは「モノを言う人から飛ばされる」という声も聞こえてくる。

 僕自身は常々「経営に対して文句を言う人を評価する。僕にゴマをすったらアウトだ」と警告している。こういうスタンスをきちんと示しておくことは、経営者の責任だと考えている。社長への情報が遮断された組織は絶対にうまくいかないからだ。僕は電話も直接受けるし、メールアドレスも公表している。

 誰もが即座に納得がいく、つまり説明が要らないというのがよい人事だと思っている。なんでこの人がここにいるのか、疑問を抱くようではよくない。ただ、若返りは常に意識している。