JALの「サ旅」やユニークなサウナが活況
――サウナを軸に色々なものがつながって、地方創生が進むということですが、それについてもっと詳しく教えてください。
加藤:そうですね、例えば「蔵サウナ」とか。地方には使われなくなった蔵がけっこうあるんですね。昔は味噌を作っていたり、呉服屋さんが倉庫として使っていたりしたものが、現在は使い道がなくて放置されているケースがあって。そういうところを改装してサウナにしていたりしますね。
新潟には海の家を改装したサウナもあります。広大な海を見ながら外気浴をできるのが魅力です。あとは、福岡の糸島氏にある「HIDEAWAY」。グランピング施設の中に、すごいこだわったサウナがあるんですよ。屋根の上に芝生が敷かれていて登れるようになっているので、そこで外気浴をしたら最高に気持ちいいですよ。
――そういうユニークなサウナ目当てで、地方に行く人はけっこういるものなんですか?
加藤:はい。サウナーの中には、全国各地に遠征する人もいますね。そういう背景もあって、JALの「サ旅」が誕生したんだと思います。JALは2021年4月から、航空券とサウナ付き宿泊施設を自由に組み合わせられる個人型パッケージツアーを販売していて、好評のようです。
――サウナは新たな観光資源としても注目されているんですね。
加藤:はい。地方のおもしろい例としては、富山に「レヴォ」という施設が誕生しています。そこは地産地消の、すごくおいしいレストランにサウナがついているんですよ。サウナは、本場フィンランド式の薪焚きサウナ。しかも外気浴は、併設されたテラスで、鳥の声や川のせせらぎを聴きながらできるという。そうやって、ととのった状態でおいしいものを食べて、そのまま泊まれるんです。
――最高ですね。都心にプライベートサウナが増えているのは知っていましたけど、地方でも新しい楽しみ方が広がっているんですね。
加藤:実は、私の新たな取り組みの一つとして、「日本に世界一のサウナを作る」というものがあるんですけど、その一環で、今、島根にサウナを作っています。まずは、島根の関係者に「島根のいいところを、場所でも物でも文化でも、なんでもいいから教えてください」と言って、まずはコミュニティーを作り、そこでサウナを妄想する会を開きました。で、語ってもらうと、自然と僕、脳内がサウナ変換されていくんですよ。「あ、それ外気浴に最高じゃないですか」みたいな。
――脳内がサウナ変換ですか(笑)
加藤:いろいろお話を伺っていくと、どんどん島根らしいサウナが出来上がっていくんですよね。
――すごいですね。先生は本の中で「最高にととのう理想のサウナ」の条件を挙げてらっしゃいましたけど、それをそのまま当てはめるんじゃないんですね。
加藤:違います。ゼロから作っています。他にも、京都と四国で、その地方の特色を生かしたサウナのプロジェクトが進行中です。かなりユニークなものになりそうですよ。
「ととのいセンサー」「混雑センサー」も開発中!
――知らない間に、サウナの世界がすごいことになっていました…。
加藤:今は、ととのいセンサーも開発中なんですよ。
――ととのいセンサー?
加藤:「ととのう」を数値化するデバイスです。「自分にとって最もととのう入り方」って、みなさん知りたいですよね。でも、それを検証するためには数値化する必要があります。それを叶えるセンサーです。脈拍や自律神経などの生体情報を指標にして、次の行動に移るタイミングがわかったり、体調の急変を即座に把握できて安全にサウナを楽しめればいいなと思い、実現を目指しています。なるべくたくさんの方に、サウナを安全に楽しんでいただきたいので。
そして、もう1つ作っているのは混雑センサー。
――サウナ室の混雑具合がわかるんですか?
加藤:そうです。今も施設によってはHPに混雑具合がのっているんですが、それは施設全体のことであって、サウナ室の情報ではないんですよね。だから混雑センサーを開発する目的は、サウナ室内の人数を把握すること。イメージ的には、これからサウナに行く場合、たとえば「上野」で調べると、上野の行こうとしているサウナの候補が空いている順に出てくる。発展形を言うと、「これから行くよボタン」とかを押すと、リアルタイムでAIが補正して、空いている情報を正確にソートしなおしてくれるみたいな。そういうアプリも、作っています。やっぱり、地域全体でサウナ好きをきちんと受け止めて、常連も新たにサウナに入り始めた人もみんな満足度を上げるというのが全体の利益になると思うので。
――今よりもっとサウナを楽しめるようになりますね。
加藤:今後も様々な取り組みを通して、サウナ文化を盛り上げるのはもちろん、社会課題をサウナを通じて解決していきたいです。
【大好評連載】
第1回 「サウナ」の一番の効果とは?
第2回 「サウナ→水風呂」だけの繰り返しは、間違った入り方!
第3回 「サウナでととのう」とは医学的にどういう状態なのか?
慶應義塾大学医学部特任助教・日本サウナ学会代表理事
群馬県富岡市出身。北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにてすい臓癌研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。
また、病理学、生理学にも詳しく、人間が健康で幸せに生きるためには、健康習慣による「予防」が最高の手段だということに気づき、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表理事として活動中。『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社刊)が初めての著書となる。