大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。
また国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。
本連載では「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。この度『ぶっちゃけ相続「手続大全」 相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を出版し、葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています。
故人がもらうはずだった「高額療養費」とは?
私たちは公的医療保険に加入していることによって、病院や薬局で医療サービスを受けたときの医療費を、最大でも3割を負担するだけで良いこととされています。
このように、日本では医療費の負担がかなり軽くすむようになっているのですが、療養や入院、手術などが長期間にわたってしまった場合などは、この制度をもってしても患者さんの負担が重くなってしまうときがあります。その負担を軽減するためにあるのが高額療養費制度です。
この制度は、暦月(1日から月末まで)で医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合、その超えた分の払い戻しを請求できる制度です。その上限については年齢や所得の状況で細かく分かれています。
例えば、70歳未満で標準報酬月額が30万円の人に100万円の医療費が発生した場合、まず3割負担で100万円が30万円になり、さらに高額療養費として21万2570円が支給されるので、実質の負担は8万7430円となります。本来100万円払わないといけないところが9万円弱になるのは驚きですよね。
「これ」は対象外です!
なお、「差額ベッド代」や「食事代」、「先進医療」の他、自由診療とされる、「歯のインプラント」などは対象とはなりませんので注意しましょう。
では、どうすればもらえるのか、手続を詳しく見ていきましょう。