1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」12代目経営者の細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書発刊を記念してそのエッセンスをお届けする本連載。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。
業界や会社の歴史をたどってみることで、
現状の問題を突破するヒントが見つかる
次に、妄想によるイノベーションのヒント②、自分の軸を縦軸方向に揺らす方法をご紹介します。
この方法は、具体的に言えば、「歴史をリサーチする」というものです。歴史からは自分の妄想を広げる「種」が見つかります。
歴史を知るということは、例えれば、過去に向かって弓の弦を大きく引くことです。そして、過去にさかのぼって調べれば調べるほど、未来へ向かって大きく前進するための力が生まれるのです。
業界や会社の歴史をたどってみることで、現状の問題を突破するヒントが見つかることは往々にしてあります。
細尾の会社が海外展開を一つのきっかけにしたのも、明治時代の西陣織の職人たちが、はるばるフランスにまで出向いて最新技術を学んだ姿勢を踏襲したものでした。
私たちが現在遭遇している困難の多くは、たいていは先人たちが同じようにぶつかり、考えて解決してきたものと共通していることが多いのです。
自分たちが築いてきた過去に大きなヒントがあるにもかかわらず、多くの人は流行りのビジネスのやり方や、最新の技術ばかりに目を奪われ過ぎているように思います。