組織と人を育てることが、いちばん重要

稲田 モノであっても、コトであっても、枠組みのような代物を導入して満足してしまう話ですね。この対談の前半でも磯谷さんから、一番大切なものは思いやりの「心」だとのお話がありました。今は、ただのスキームの導入が「打ち手」と捉えられてしまい、「うちもやっています」と、まるで良い訳のごとくに通ってしまう風潮があります。これも「米国式のマネジメントの仕方」というコトを、上っ面だけで捉えて、経営側が決めれば、あとは組織に向かって言い放てばそれで良いという勘違いが蔓延しているためだと思っています。

磯谷 そうかもしれないね。

稲田 米国式のマネジメントでは、上が最終的な結果責任を持ちますので、断じて「丸投げ」にはなりません。うまくいかなければ誰かが必ず責任を問われますし、責任者はクビになることさえあります。日本では、ある程度、雇用が保証されている背景のもと、結果として責任の所在があいまいになる企業が出てくるのだと思います。

磯谷 そうなのだろうね。結局、組織と人を育てること。製造業の人たちは、生産性を最高に上げる、リードタイムを最短にすることに熱心に取り組む。ここを徹底的にやれば、成果が上がり、やりがいにつながり自信になる。そうして過ごしてきた人たちは、定年後もコンサルタントなどになって、十分に活躍できていると思う。

稲田 そうですね、本当に。現場も含めた全ての社員が考える組織を作れば、そこにいる限り、個人個人の能力も磨かれますし、結果的には、経営側も経営分業をしやすくなりますね。

磯谷 しかしだ。大野さんの言っていた、こういう基本さえやっていない会社が現実には多い。現場へ行ってパッと見れば、すぐにわかる。

つづく