相手とのほどよい距離感のとり方
漫画家。
実録系4コマ漫画、台湾旅行記、エッセイ漫画を中心に幅広いジャンルで活躍中。2018年よりウェブメディアでHSPを題材にした漫画を発表する。著書に『汚部屋掃除人が語る命が危ない部屋』(竹書房)、『台湾で日本を見っけ旅』(ぶんか社)、『繊細すぎて生きづらい~私はHSP漫画家』(ぶんか社)などがある。
Twitter:@ogachinpa
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おがた それから、人との「距離」ということで言うと、HSPの中でも私たちのようなHSS系の場合、明るくて誰とでもすぐ仲良くなれるのに、実は内心とても傷つきやすいがゆえに、自ら急に離れてしまうこともありますね。
みさき ええ。自分が嫌われて相手が離れていくのではなく、自ら相手と距離を置くことがあるんですよね。
おがた 私の場合、ふと気づいたら、長く付き合っている友達というのは台湾とか九州とか離れた所にいる人ばかりなんです。ちょっと距離のある人とのほうがうまくいく。あまり深く付き合うと、ノイズが出てくるというか……。
みさき よくわかります。私の場合、職業柄、相手がものすごい質量で勢いよく途切れなくドッと吐き出してこられる場合があるんですね。それがつらい! 仕事としてのカウンセリングやキャリアコンサルティングの場であれば、こちらがリードして一定の時間内で区切りをつけることができますが、プライベートな場で話を聞く流れになった場合、区切りをつけるのが難しいんです。
おがた HSPさんは真剣に相手と向き合って感情を共有しちゃうから、消耗してしまう。だから努めて距離をたもたないと……。
みさき 「話がかみ合わない」というのも状況によりけりで、相手はかみ合っているつもりで、テンション高くぶつけてくるギャップがつらい場合と、こちらが遠慮しすぎて相手とかみ合わなくなり、疎遠になる場合とがありますね。
おがた 近すぎるとパワーを消耗して疲弊してしまう。多少距離があって、性急に近づく必要もなく、ゆっくり間が取れるほうが付き合いやすいんですよね。一時期、私の漫画を読んだ方から相談のメールが来たことがあって、安易にお応えするわけにはいかないと悩んだ末、Twitterに「個人的な人生相談受け付不可です」と書き添えるようになりました。
みさき この数年、HSPさんに限らず、聞いてほしいという思いを持つ方が増えている気がします。オンライン上のコミュニティはありますけれど、やはりリアルの住環境の範囲にコミュニティがなくなってしまって、その反動ではないかと私は思うんですけれど。ちょっとした会話をする機会もなくて、心に抱えているものが重くなった状態で、プロのカウンセラーなどを訪ねる方が増えているように思います。ですから私、相談に来られる方には、「本当にどうでもいい話ができる相手を何人か確保してくださいね」と口を酸っぱくして言います。1人じゃ足りませんよ、相手が24時間365日、目覚めて待っていてくれるわけではないですからねって(笑)。そうすると皆さん、はっとされる。
おがた う~ん! なるほど……! 私は夫と子どもがいるんで、両方にしゃべりまくっています(笑)。
みさき 私は夫にも話しますが、それだと夫に負担がかかっていると判明したので(笑)、広く浅く、外で分散して話すようになりました。夫からある日、「僕もつらいよ」と言われてしまったので(笑)。
おがた うちの場合、夫は「半分以上、聞いてないから大丈夫!」って(笑)。でもね、それで良いんです。ほぼ聞いていなくてもいい。答えなど求めていないので、とにかくしゃべらせてもらえれば。これ、とても大事です。
みさき それに、おがた先生は漫画という表現手段も持っていますしね。
おがた そうですね。傷つくことがあっても「これ、ネタに使おう」と考えて漫画にできる。それで助かっている部分はあるかもしれません。
みさき 一般の方も、ブログとか、自分なりに何かを作ったり、絵を描いたりすることで発散するのはとてもいい方法だと思います。あるいは、1人で完結するより、何らかのリアクションがあったり、誰かと交流できる場を持ったりするとか。
おがた そういえば、2年くらい前にYouTubeのライブ、ご一緒しましたね。
みさき そうでしたね。とても好評でした。例えばああいった場が大事なんですよね。内容もさることながら、同じ感覚を共有できる人同士が共感し合いながら話していて、自分も共感しながら見ているという、そういうほどよい安心感がHSPさんたちにとって心地良かったのだろうと思います。
おがた 共感し合えている、その感覚がいいんですよね。皆で共有するということがHSPさんにとってはとても大きな癒しの一つ。
みさき はい。リクエストも多いので、コロナ禍が収まったら交流会をしたいです。