名ばかり産業医の闇#5Photo:sefa ozel/gettyimages

ビジネスパーソンならば、健康経営を標榜することが企業の生命線であることは理解できるだろう。だが、実際にそれを実践するとなると高いハードルが立ちはだかるものだ。特集『名ばかり産業医の闇』(全5回)の最終回では、「健康経営銘柄」に7年連続で選定された花王や、埼玉県の中小企業の取り組みを通じて、産業医の活用法など“必要なエッセンス”を紹介しよう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

健康経営を標榜する企業でも
表層的にとどまる例は多い

 いまや健康経営は、企業の興亡を左右する重大な経営テーマの一つになった。優良な人材の確保や定着はもちろんのこと、健康増進による従業員の活力や生産性の向上――。従業員の健康や働き方の改善は、経営にさまざまな恩恵をもたらす。

 だが、健康経営の意義は理解できても、真の意味で実践できている企業は少ない。経済産業省などが認定する「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」といった企業を顕彰する制度はあるが、これらは「表層的な取り組みだけで認定の基準を満たしてしまうので、中にはなぜ認定されているのか首をかしげてしまう会社もある」(ある産業医)という声すら聞こえてくる。

 果たして、真の“健康経営先進企業”は一体、どんな取り組みを行っているのか。7年連続で「健康経営銘柄」に選定されている、健康経営優良企業として名高い花王の事例を通じて、そのエッセンスと同社の産業医の活用術について紹介しよう。

 以降では、花王が健康経営を掲げる上で肝となる「四つのキーワード」についても取り上げる。