NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスをお届けする本連載。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。

美への投資の成功例 ブルネロ クチネリが掲げる「人間中心主義」の経営とはphoto: Adobe Stock

「人間中心主義」を掲げるブルネロ クチネリ

 「美意識の大切さはわかるけれども、それがそんなにうまく、ビジネスでの成功につながるのか」と思われる方もいるでしょう。

 イタリアのファッションブランド、ブルネロ クチネリをご存じでしょうか。

 「人間中心主義」を掲げ、美意識を持った経営を文字通り実践し、美への投資を非常に積極的に行なっているブランドです。

 ブルネロ クチネリ氏が一九七八年に創業し、一代で世界的企業へと成長させました。現在はフィレンツェの近くにあるソロメオという小さな村(人口は四〇〇人ほどで、クチネリ氏の奥様の出身地でもあります)を拠点に、古城を改装してオフィスにしながら、世界的なビジネスを行なっています。

 ブルネロ クチネリの服は、たとえばジャケット一着で数十万円はするものです。そしてその値付けは、社で働く職人・社員の尊厳を重視することから来ています

 商品に適正と考える価格をつけて、クチネリ氏は実際に職人たちに利益を還元しています。そこにこそ、「人間主義的資本主義」の美意識が表れています。