会計学に触れると、必ず貸借対照表に出会う。別名、バランスシート(BS)という。バランスシートでは、右(貸方)と左(借方)の合計は必ず一致する。人生における損と得、不幸と幸福も、このバランスシートのようにバランスすると、陰陽論は説いている。ここで大切なのが不幸と幸福の総量である。不幸が-10だと幸福は+10でバランスする。不幸が-10,000だと、幸福は+10,000でバランスする。このことを、東洋哲理では2500年前から教え諭している。
大きな破壊現象が起これば、それと同等の創造現象が営まれる。ピンチはチャンスだとは、よく言ったものだ。力量のある者、地獄から這い上がってきた者は、破壊現象というピンチや損に遭遇すると、新たなチャンスの始まりだと捉える傾向がある。彼らは何かが創造される前に、既存構造が破壊される事を体験的に知っているのだ。
物事の本質を知れば不安がなくなる
無知は良くない。物事の本質を知っていた方が、不安に駆られないで済むからだ。損をする、既存構造が壊れる、ピンチに遭遇する、批判を得るといった機会は、チャンスへの起因である。この知見を持っていると、現時点でどれだけ人生が壊れ続けていても、いずれその破壊現象が終わり、創造現象に転じる事が理解できる。つまり、人生に希望を持ちながら、今体験している破壊現象と向かい合うことが出来るのだ。
諸行無常という仏教用語がある。人生における全ての事象は、必ず変転変化し留まる事を知らず、という意味だ。密教阿闍梨としての立場からも経営者としての立場からも、経済や産業構造や時代背景は、必ず変転変化すると断言できる。私たちは今、変転変化を恐れずに新たな時代の変革に適応して、人生観を大きく変容させるべき時期に差し掛かっているのではないだろうか。
不幸と幸福は等価交換して、必ず変転変化するということを理解していると、現状に不平不満を撒き散らして嘆くことなく、夢や希望から可能性を見出して生きることができる。どんなに最悪な状況であっても、生きていれば、必ず好転する時期がくるからである。どうか生きることが困難なこの時期に、少しでも希望や、生きがいや、可能性を持って生きて欲しい。今回は、帝王学の陰陽論から、陰陽の等価交換法則が働くという知見を解説した。第2回は「人生の道を開く」というテーマから、人生を変える公式の詳細を解説したい。
最後に一つ、一休和尚の言葉を贈ろう。
「人生は成るように成る。我欲を出さずに、目の前の方や事象のお役に立つ事が事に仕えることであり、仕事をしている事に通じる。流れに身を委ねる事である」