今月から2023年卒業の学生らの就職活動が本格化した。コロナ禍でオンライン面接の機会が増え、選考フローも変化しているが、書類選考や面接を勝ち抜いて志望企業への内定を獲得するためには、「企業が応募者に求めていること」をきちんと理解しておくことが重要だ、という点に変わりはない。
そこでヒントになるのが、マッキンゼー・アンド・カンパニーの採用マネジャーを12年務めた伊賀泰代氏「いまの日本が必要としている人材像」を解説した『採用基準』(ダイヤモンド社)だ。
本稿では本書より一部を抜粋・編集して、「成果を出せるリーダー、全く出せないリーダー」の根本的な差を解説する。(構成/根本隼)

「成果を出せるリーダー、全く出せないリーダー」の根本的な差とは?Photo:Adobe Stock

リーダーは何よりもまず「成果目標」を定義すべき

 まずリーダーに求められるのは、チームが目指すべき成果目標を定義することです。そしてその目標は、メンバーを十分に鼓舞できるものである必要があります。

 人がつらい環境の中でも歩き続けられるのは、達成すれば十分に報われる目標が見えているからです。その目標、すなわちゴール(到達点)をわかりやすい言葉で定義し、メンバー全員に理解できる形にしたうえで見せる(共有する)のが、リーダーの役割です。

 マラソンでも行軍でも、人はゴールがどこにあるか、いつ頃到達できるかが理解できているからこそ、歩み続けることができます。どこに向かっているのかも、いつ終わるのかもわからず、「俺がいいと言うまで何日でも歩き続けろ」と言われて、ひたすら歩き続けるモチベーションを保てる人はいません。

「とにかく売上を上げろ、できるだけ利益を上げろ」と連呼するのはそれと同じです。これでは社員はエンドレスの努力を求められていると感じ、達成感も高揚感も得られないまま疲弊してしまいます。

努力と報酬がバランスしないと人間は努力しない

 一方で、「この技術で世の中を変える!」とか「5年後にこの業界で世界のトップ3になる!」という言葉は、社員たちに、自分たちが向かうべきゴールが何であるかを明確に示しています。さらにそれらは「つらくても頑張ろう」と思えるに足る魅力的なゴールです。

 人間はみんな合理的です(打算的と呼んでもよいでしょう)。求められる努力と、結果として得られるものがバランスしていないと感じれば、努力をしなくなります。

 だから行く道が厳しければ厳しいほど、「そこに到達することで、自分は大きな高揚感が得られる。多大な苦労は伴うが、ぜひ、到達してみたい」と感じさせることが必要なのです。

カリスマ経営者が壮大な目標を掲げる理由

 カリスマ経営者の多くが、他の人から見れば無謀で、行き過ぎで、あり得ないほど高い目標を口にするのはそのためです。彼らは能力も意欲レベルも異なる人が混在する巨大な組織を率いています。

 突拍子もないくらい高い目標を掲げなければ、何万人もの社員を動機づけ、走らせ続けることはできません。行く道が厳しいとわかっているからこそ、高い目標を掲げるのです。

 こういった企業の社員はよく、「うちの社長はいつもむちゃくちゃ高いところに目標を設定する。そのせいで組織が混乱して困る」と愚痴を言いますが、それはリーダーの重要な役割です。愚痴を言っている人たちも、自分がリーダーになった時には、高い目標を設定することの意義を理解するでしょう。

(本稿は、『採用基準』のP.116~118より抜粋・編集したものです。)