DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためには、外部のITベンダーやコンサルティング会社をうまく活用する必要がある。ここではセブン&アイ・ホールディングスのDX戦略崩壊を明らかにした特集『セブンDX敗戦』の記事を基に、外部企業活用の失敗事例を紹介していきたい。(ダイヤモンド編集部副編集長 清水量介)
アクセンチュア、NTTデータ、野村総研は
セブン&アイのDX敗戦でどう動いたのか
大企業のDX推進に外部のITベンダーやコンサルティング会社が関わらないケースは、ほとんどない。故に外部企業をいかにうまく活用するかが、成功の鍵となる。
その点では、特集『セブンDX敗戦』で伝えた、セブン&アイ・ホールディングスのDX推進は「外部企業活用失敗の教科書」といえよう。
『【スクープ】セブン&アイのDX、担当役員は失脚しIT新会社は白紙!内部資料で暴く「完全崩壊」全内幕』では、セブン&アイが巨費を投じたDXがわずか1年で水泡に帰したことを、大量の極秘内部資料を基に明らかにしている。
失敗の理由は複数あるが、DX戦略失敗を統括した内部資料では、外部のITベンダーとコンサル会社の話題が頻出している。そこからは、外部の企業が暗躍していたり、際どい発注をしていたりすることが読み取れるのだ。そして騒動の末、外部企業の序列に変化が生まれたことも分かる。
ベンダー各社が必死になるのは当然だろう。なにしろ、上位企業ともなればセブン&アイからの受注額は70億~80億円にもなるからだ。
『【スクープ】セブン&アイDX案件の「受注額が高いITベンダー」ランキング、極秘リストで53社の実額判明』では、セブン&アイから受注するITベンダー53社の実名と実額をランキングで掲載。PwCコンサルティング、NEC、日鉄ソリューションズ、NTTデータ、野村総研、アクセンチュアなどの名前が並ぶ。
さらに、『【スクープ】セブン&アイDX案件「ITベンダー人月単価」ランキング、トップは1人月350万円!?』では、主要ベンダー12社の1人当たり月単価も、内部資料を基に実名と実額を明らかにした。トップ企業は月350万円もの「破格条件」を引き出しているから驚きだ。そして内部資料では「突出して単価の高いベンダーへの委託内容について、より精査が必要」とくぎを刺している。
これだけの金額が動くのだから、序列にも変化がある。社内のDXを巡るゴタゴタに巻き込まれたのが、野村総合研究所だ。野村総研とセブン&アイは、長い間、太いパイプで結ばれていた。ところが新任のDX担当執行役員が“野村総研外し”を画策したことが、セブン&アイ創業家の怒りに触れることに。
『【スクープ】セブン&アイと野村総研の蜜月に横やり、DX担当役員の「不始末」に創業家激怒』では、騒動の結果、セブン&アイに出入りするITベンダーの序列にも変化が生まれたことが克明に描かれている。
特集ではセブン&アイ側の甘さが、ベンダーにつけ入られていると指摘。あるベンダー関係者は「セブンはすごくやりやすい客」と明かしている。具体的には、同社が最初の見積もりでは強く値下げを求めるものの、その後の期間延長や工数増にはあまり気を払わないというのだ。
一連の混乱を示す極め付きともいえる記事が『【スクープ】セブンで出向社員が出向元へ127億円発注!「DXバブル」の裏でコンプラ違反疑惑』だ。
なんと、ITベンダーからセブン&アイへの出向社員の所属部署が、出向元である自社に対して、合計127億円も発注していたのだ。しかも、セブン&アイ内で上がってきた610件の関連稟議に対して、提案依頼書(RFP)の作成が実施されたのはわずか3%。セブン&アイの内部資料では「コンプライアンス上のリスクが懸念される」と警鐘を鳴らしている。
なお、セブン&アイ・ホールディングスの齋藤正記・執行役員グループDX推進本部長兼グループDXソリューション本部長が、『セブン&アイDX担当役員が明かすITベンダー選定戦略、「野村総研やNECは今後も重要だが…」』で特集に反論。ITベンダーやコンサルとの関係性がどう変わるかも言及しているので、こちらも併せて読んでほしい。齋藤執行役員の言葉を信じるのなら、内部資料で指摘された各種の問題は、今後、改善されていくのかもしれない。