仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手…。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。
本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。
2021年9月に、本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』が発売となった。今回は特別に本書の中から、一部内容を抜粋、編集して紹介する。
「他人の目」よりも「自分の目」を大切にしよう
誰だって「他人の目」はある程度気になってしまうものですが、人の評価ばかり気にしていると、苦しくなるのも当然です。
人の評価ではなく、「自分自身が自分をどう評価するのか」が大切です。
ひとりひとりにそれぞれのスタイルがあり、そのスタイルに合った生き方があります。そして、それぞれの目標もあります。
自分がやりたいこと。自分がなりたい姿。自分で自分をどう評価するか。人の評価に振り回されないようにするためには、「自分の目」を持つことが重要なのです。
「自分の目」を考えるためのヒントとして、お笑い芸人やミュージシャンを参考にしてみるのもいいかもしれません。
お笑い芸人には、早く売れたくて万人にウケそうなネタをつくる人もいれば、自分のやりたいことしかやらない人もいます。
売れたい人は人気を気にしています。「他人の目」を重視するタイプです。
一方、人気はそこまで重視せず、自分の表現したいことを追求して、個性的なネタばかりつくる人もいます。「他人の目」よりも「自分の目」を意識し、自分がおもしろいと思うものをつくっていきます。
そのおもしろさが、わかる人にはわかる。おもしろさを追求することで、ファンを増やしていける、と思っているわけです。
ミュージシャンも同じです。いま流行している曲を参考に、売れそうな曲をどんどんつくる人もいれば、世の中の流れに関係なく、自分たちのやりたい曲しかつくらない人もいます。音楽事務所の方針が「万人ウケ」の場合、自分たちのやりたい曲づくりを優先したくなって、独立する人もいるでしょう。
また、お笑いでも音楽でも、ある程度売れるまでは万人ウケを狙っていって、一定の地位を確立してから自分のやりたい路線に進む人たちもいます。
そのような例を参考にして、自分が「万人ウケ」を目指しているのか、「我が道を進む」タイプなのかを考えてみると、「他人の目」「自分の目」をどれくらい意識しているかがわかるかもしれません。