『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

心を壊すことも…「夢を持つ」ことの意外な副作用とは?Photo: Adobe Stock

[質問]
 兼業主婦です。幼い子ども二人と、正社員の夫婦二人、贅沢しなければ普通に暮らしていけます。

 ですが大した楽しみもなく、閉塞感を感じる日々です。

 もともと起業して成功するのが夢でしたが日々の雑務に忙殺されなにかを考える気力が湧きません。事業のアイディアもなにも浮かびません。

 何かを変えたいと漠然と思い続けていますがなにをどうすることから始めていいのか分かりません。

 なにか解決に導けるような思考法はありますでしょうか。

夢とトラウマは同じ機能を持っています

[読書猿の回答]
 片方は良いもの、もう片方は悪いものとして世間では扱われますが、(実現したい)夢というのは、心的外傷(いわゆるトラウマ)と同じ機能を持っています。人の心を捉え駆り立てますがどちらも関係を切ることは困難。

 だからこそ、夢は人を、常人では達しない領域に引き上げることがありますが、その反面、大切なことに気付けなくしたり、最悪、心や生活を壊すこともあります。そういう意味では「若者よ、夢を持て」と言うのは相当に無責任です。

「なんだお前さん、夢持ちか。ま、持っちまったものは仕方がない。せいぜい夢に喰われんようにうまく付き合うんだな」というのが、大人の態度です。そして付き合い方は、トラウマとの付き合い方が参考になります。

 以前の記事でも紹介しましたが、襲ってくる記憶や感情を、意味づけしたりコントロール下に置こうとしない、「お前のせいで人生めちゃくちゃだ」などと怒りをぶつけないのが大事です。