起業家の思考法は成功事例の分析で鍛えられる

――「過去」に問題解決して成功したケースの情報を集めた分析は、平尾さんが学生時代に起業した頃から続けていることですね。

平尾 一人で考え込んでも前に進まないので、人に話を聞くことは優先してきました。ただ漠然と問題をとらえていても、具体的な解決策は導き出せませんので。今はSNSでつながることができる便利な時代なので、過去の情報は収集しやすいですよね。ネットで調べるだけでも多くの情報にアクセスできますし、会いたい人がいればすぐアプローチできるので、会える人にはどんどん会ったほうがいい。

 そこから、過去のトップの人はどのくらいの水準か? 成功者の成功要因は何か? どのように成果を出したのか?といったことを見極めます。私はビジネスコンテストの審査員も務めていますが、過去に成果を出した方に話を聞きに行ったことがないだけでなく、調べてもいない方が多くて、本当にもったいないと感じます。

 次に確認するのは「自分」の資源、リソースの確認です。強みと弱みは何か、仲間は何人いて動いてくれそうかどうか、コストや時間はどのくらいかけられるか、競合は誰か(何か)といったことを思いつく限り書き出していきます。

――「マーケット」と「周り」についてはどういう見方をすればいいでしょうか。

平尾 マーケットや周りは、自分が置かれている環境や、顧客は誰なのか、競合は誰で何人くらいいるのか、といったことの確認です。競合の数やレベル、事業規模や成果も調べて、もう勝てないのかチャンスはあるのか、判断も必要でしょう。自分一人では勝てなくても、仲間を集めて強みを発揮すれば勝てる可能性もあるかもしれません。

 8個目の「未来」は、過去の情報収集や現状分析をしたうえで、未来を予測するわけですが、先のことは誰にもわかりません。それでも、近未来を描いた漫画や小説、SF映画の世界からヒントを得ることもありますし、日本だけでなく世界の人口動態からわかる今後の変化、産業や社会が抱える課題など、予測できることはできる限り予測します。

誰でも解くべき問題を発見できる「8M」とは