店長は“人間力”を高めなければならない

――この時オープンしたお店の店長は、どのようにして選ばれたのですか。

外食業界のレジェンド 横川竟会長と語る ポストコロナに必要な人材育成戦略とは?横川竟(よこかわ・きわむ)
1937年生まれ。長野県諏訪市立四賀中学校を卒業後、築地の乾物問屋に勤務。1962年に4兄弟でことぶき食品を設立。米国を視察し、1970年にすかいらーく1号店をオープン。ファミリーレストランのチェーン化に乗り出す。1980年にジョナサン社長に就任。2006年にすかいらーくのMBOを実施。2008年にすかいらーく社長解任。2013年に高倉町珈琲1号店をオープン。2014年に株式会社としてチェーン展開。現在の店舗数は35店(2022年3月末現在)。

横川 その店長は、ジョナサン時代の部下で、高倉町珈琲の1号店の店長も務めました。だから、僕の考えをよく理解しています。高倉町珈琲にはジョナサンやホテル、他のレストラン出身の社員が多いので、店長候補はたくさんいますね。

――すかいらーく時代には、店長育成に力を注いだそうですね。

横川 出店を拡大するには、店長育成が急務でした。その育成プログラムをつくったのが僕です。簡単にいえば、店長に必要なスキルに絞り込み、フロア、厨房の順に商売の基本を学び、違う店長のもと、3店舗でマネジメントの経験をさせて、2年で店長にするというものです。最短で6ヵ月で店長になった人もいますよ。

 チェーン展開するにあたって、重視したのが品質の安定です。だから、料理の質を安定化するために、セントラルキッチンをつくり、サービスにおいてはマニュアルをつくったのです。当時、レストランのサービスといえば、先輩を見て学ぶというかたちがほとんどでした。日本のファミリーレストランとして、日本の風土に合ったマニュアルをつくったのは、僕たちが最初なんじゃないかな。多くのレストラン関係者が「一度、見せてほしい」と視察にきたものです。

 有本さんも、日本マクドナルドで「ハンバーガー大学」の学長をなさったんですよね。

有本 私がハンバーガー大学の学長になったのは、日本マクドナルドが「サテライト戦略」とよばれる大規模出店戦略をとっているときでした。早期に店長を育成するために、マニュアルを再構成するとともに、店長に必要なスキルを学んでもらうための集合研修を企画しました。

 この時に感じたのは、人は一定の目標を設定し、計画的に学ぶようにすれば、成長できるということでした。

――有本さんは、店長に必要なスキルや素質についてはどのように考えていますか。

有本 一言で言えば、店長には人間力が求められるということでしょうか。店長は店舗運営にとどまらず、現場のスタッフの教育など、その役割は多岐にわたります。店長のスキルが低ければ、スタッフは定着しませんし、お店のレベルも上がりません。そうなれば、お客様も増えません。店長には、リーダーシップやコミュニケーション力など、必要なスキルを意識して学ぶことで、人間力を高めていっていただきたいと思います。研修を活用するのも一手です。

 また、人材育成には、「教育」と「評価」の両輪を回す仕組みが必要だと考えます。評価がなければ、せっかく学んだことが身につかずに終わってしまう可能性が高いからです。