離職防止に向けて店長がすべきこととは?
――有本さんは、著書の『全員を戦力にする人財育成術』のなかで、「人を選べる時代は終わった。どんな人でも辞めさせないで育てる覚悟が必要」と指摘しています。企業はそのために何をすべきでしょうか。
1956年生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルドに入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。ファーストリテイリングの柳井正会長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」部長に就任。バーガーキング・ジャパン代表などを経て、2012年にホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。
有本 企業がやるべきことは、「労働環境」、「教育」、「評価」の3つをきちんと整備することだと考えています。スタッフは教育を受けたあと、実際にそれが実践できているかどうか評価されることで、成長が実感でき、仕事のやりがいにもつながります。そういう”仕組み”をつくることが大事だと考えています。
そして、離職につながる最大の課題が労働環境です。残業が多いことや職場の雰囲気が悪い、人間関係がよくないなど、労働環境に関する不満はさまざまです。ただ、そういう問題を店長の力量任せにするのは、問題解決にはつながらないでしょう。仕組み化することを考えるべきです。
たとえば、店長にチーム・ビルディングやリーダーシップの研修を行い、それが実践できているか評価することで、店長の人間力を上げることができるでしょう。その結果、スタッフの間にチーム意識が芽生え、同じ目標を持って頑張り、達成感を共有できれば、職場の雰囲気はよくなるでしょう。そうなれば、スタッフが定着し、仕事の生産性が上がり、残業を減らすことができるかもしれません。
――横川さんは、店長の資質についてはどのようにお考えですか。
横川 実のところ、店長というのは、やってみないとできるかどうか、わからないものです。言われたことをきちんとやるのと、戦略を考えてマネジメントするのはまったく別のことです。だから、店長になるための条件をクリアしており、やる気があるのであれば、男女に関係なくやらせてみればいいのです。やってダメなら、足りないところを学びなおすなり、他の仕事をすればいいのです。
ところが、実際には男女に差が生まれている。「家族の世話がたいへんだから」などと慮って、女性に挑戦するチャンスすら与えてこなかったのではないでしょうか。
人手不足の時代、働き方も地域社員、パート・アルバイトなど、多様化しています。「店長は正社員から選ぶ」などという旧態依然の発想でいたら生き残れません。そういうカテゴリーをとっぱらって、適材適所を考える。経営者は発想を変えていかなければいけないと思いますね。