仮説と検証の精神

星:理論をベースに、仮説を立てると、なぜうまくいかなかったのかを自覚できて、新しい知識を学ぼうとしたり、次につなげることができますね。

保田:確かに、プロジェクトをやっていくうえで、仮説を立て、それを検証する必要があることをみんなが理解しているかどうかが、非常に重要ですね。

 単純に商品をつくって、売って、とりあえず収益を上げるとなると、そこには仮説がなく、検証のしようがありません。

 例えば、「こういう宣伝を打った時はどういう結果が出るはずだ」「従業員の給料をこれくらいに上げると、働く意欲がこれぐらい上がるはずだ」といったように、すべてにおいて仮説があるはずなので、仮説を検証する認識というのは持つべきだと思います。

 仮説を検証するという概念が、ビルトイン(内蔵)されていれば、「検証した結果、間違っていた。では、次はこうしよう」という検証からピボット(方向転換)の流れで考えていけます。

 それが、おそらく失敗を許容する社会や文化につながるのではないかと思うんですね。

 仮説を検証して初めて失敗する可能性が出てきますが、日本の場合は仮説を検証するプロセス自体がないので、失敗を経験することがない。

 そのため、失敗が許されない風土になってしまう。

星:なるほど。教育や学習面でいうと、「確実な答え」と「間違い」という両極端な話になってしまいがちです。

 けれども、世の中のほとんどすべてのものが仮説です。

 一番より良い仮説、生き残ってきた仮説なだけであって、それがまた後になって覆されることは往々にしてある。

 ついつい生きていると、確かさを求めてしまいがちです。

 ですが、やはり物事は仮説的であるという見方で、そのうえで、どのようにテストしていくかというマインドセットでいくことのほうが、失敗から学べたり、不確かな状況でも対応できる、レジリエンス(適応する力)が生まれたりすると思います。

 起業家精神を育てていくことは、そのような「心の成長」にも繋がると感じました。