まずは「伴奏のパターン」を身につけよう

――ピアノを簡単に楽しむためにも、作曲をするためにも、まずは伴奏のパターンを知ることが近道なんですね。

monaca:そうです。そもそも「この曲は楽しげ!」とか「哀しい」という印象は、メロディが決めているわけではないんです。

 楽しい、哀しい、クリスマスっぽいなど、曲の雰囲気を作っているのは伴奏です。あるメロディが鳴っているからではなくて、伴奏が哀しいパターンになっているから、哀しい曲になっているんです。

 その雰囲気を決めているのが、和音(=コード)なんです。「Am」が最初に来ると哀しい。「C」が最初に来ると明るい。そんなふうに僕らは認識しているんです。

 僕らの感情にリンクしているのはメロディよりも伴奏です。だから、僕はシンプルに「伴奏パターン」を教えることから始めています。ピアノを楽しく弾くためにも、作曲をするためにも、それが近道だからです。

――伴奏のパターンを知らないと、なかなか作曲ってできないものですか。

monaca:人それぞれなところはありますが「真っ白な画用紙に、自由に絵を描いてください」といきなり言われても、かえって何も描けないですよね。

 それはつまり「鼻歌を歌えばオリジナルの曲ができるよ」と言っているようなものです。

 いきなり自由に絵を描く前に、ティッシュの箱や花瓶の描き方のような「基本パターン」をいくつか身につけておく。それらをいくつか知っていれば、縦にしたり、横にしたり、大きくしたり、小さくしたりしながら、いろいろ組み合わせて、自分なりの自由な絵が描けるようになる。そんなイメージです。

 作曲もまったく同じです。いくつかの伴奏パターンを知っていると「哀しい曲」「楽しい曲」「クリスマスっぽい曲」などのイメージで自分で組み合わせて作れます。そのベースがあるから、自由にメロディを乗せて、ちゃんとした曲になっていくんです。

 もともと僕は「音楽理論を学ぶべき」といったことは嫌いなので、難しい理論を学ぶ必要はないと思っています。ただし、基本パターンは土台となる部分です。「作曲をする」ために最低限知っておきたいことなんです。だからこそ『90分でいきなりピアノが弾ける本』では、とてもシンプルにわかりやすく伝えています。

 これまでまったく作曲をしたことがないけれど、ちょっとでも作曲に興味がある人には、ぜひこれを知ってもらいたいですね。作曲するイメージがすぐにつかめると思います。

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monaca:factory
作曲家。ボカロP。
小学校入学とともにピアノをはじめる。教本の練習は嫌いだったが、中学生時代に自分で好きな楽譜(ファイナルファンタジーシリーズなど)を買って弾くようになり、音楽の楽しさに目覚める。高校ではブラスバンド部でチューバを担当。大学時代に初音ミクに出会い独学で作曲をはじめる。音楽活動と並行しIT系会社に就職、プログラマーとなるも、音楽への興味により2年目に退職。以降フリーランスの作曲家として活動を開始する。歌モノからBGM制作まで総制作数は12年間で500曲を超え、動画サイトで100万再生を超える楽曲も発表している。作曲と並行して都内でピアノレッスンを行っており、楽譜がよめない楽器未経験者でも1日でピアノが弾けるようになると好評を得ている。学びの楽しさを教えることが好きで、中学・高等学校の教員免許(英語)を取得。DMMオンラインサロンにて「音楽クリエイターになる学校」を運営中。著書に4万部を超えるベストセラーになった『作りながら覚える 3日で作曲入門』やコミックエッセイ『作曲はじめます!~マンガで身に付く曲づくりの基本』(共にヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)がある。
公式サイト:https://monacafactory.com
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