選択基準③日本株が入っているもの

 選択基準2で、日本株の比率は低くしたいとはいいましたが、全く入っていないのもダメです。指数連動型のインデックスファンドで、「日本を除く」とあったら、そのファンドは選ばないでください。

 日本が少子高齢で未来は明るくないとはいえ、時価総額ではまだ世界3位の位置です。全世界へ投資すると決めた時に、日本をすべて外してしまうのはやはり論理矛盾なのです。

 確かに、今の日本経済が置かれている環境は、ネガティブな要因がたくさんあります。本格的に人口が減り始め、高齢社会ではなく「超高齢社会」になっています。超高齢社会になると、現役世代の社会保障負担が重くなり、経済活力が失われていきます。

 かつては世界中を席捲していた日本製品も、すでに韓国製品や中国製品に取って代わられました。少なくとも現状において、日本の未来は決して明るいものではありません。

 でも、20年後、30年後がどうなるのかは、正直なところ誰にも分かりません。

 私が運用の世界に足を踏み入れた頃、もうかれこれ30年以上も前のことになりますが、米国に出張すると治安がボロボロで昼間、街を歩くのも怖い思いをしたものです。当時の米国経済は、そのくらい疲弊していました。

 ところが、90年代の半ばからインターネット高速通信網がどんどん整備され、情報通信分野において米国は覇権を握るようになりました。

 今から30年前、まさか米国がここまで成長するなどとは、誰も思っていなかったでしょう。

 何かほんのちょっとしたことがきっかけになり、経済構造は大きく変わるのです。それは日本だって例外ではありません。

 だから、日本株を完全に外した国際分散投資のポートフォリオは、選ばないほうがいいのです。

(つづく)

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言、国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う複数のファンドアワードで連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産4700億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』他多数。