メーカー(製造業)の仕事は、自動車、電機、食品……などの商品・サービスをつくって売ることですが、お客さまに満足いただけるものを過不足なくつくって遅滞なく届けるために、メーカーにはさまざまな機能があります。たとえば物流インフラを維持するために、管理レベル別に3つに分けて考えることがあります。メーカーを目指す人なら知っておきたい基本について、書籍『全図解メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ』から紹介していきます。

物流インフラを維持するために、メーカーとしてすべきことには何があるでしょうか。1つの考え方として、管理レベル別に整理してみましょう。管理のレベルとは、戦略・計画・実行といった、業務を担当する人々に求められる視座の高さと視野の広さによる分類です(図16-5)。

メーカーに就職したいなら知っておきたい「メーカーが物流を把握する3つのレベル」図16-5_物流の戦略・計画・実行
拡大画像表示

1つめは商品の入出荷や在庫保管を行う物流現場を管理する「実行レベル」です。管理範囲は比較的狭く、倉庫内の業務や輸配送に関する業務です。ここでは日々の業務を計画通りに実行することが重要になります。納品期日までに業務を遂行するため、各作業工程の生産性の把握から適正人員の配置、現場での改善活動を継続的に行います。

メーカーとして、ここまで細かな物流業務に直接関わることはあまりないかもしれません。ただし、協力企業に丸投げするのではなく、KPIを決めて実態を把握しなければなりません。トラブルが発生した際、その根本的な原因を自分たちで考えることができなくなってしまうからです。

2つめは、物流部長やセンター長などが管理する「計画レベル」での視点です。物量予測や人員計画などの管理、各工程の優先順位決め、関係部門との調整など、物流における司令塔的な業務です。物量予測には、メーカーからの需要予測の提供が有効ですし、それを踏まえて人員計画や配車計画が組まれます。ここでの情報連携に問題がないかの確認は重要です。

最後は事業戦略も考慮して物流を考える「戦略レベル」です。事業戦略の実行を念頭に、物流がどうあるべきかを議論し、メーカービジネスのインフラともいえるサプライチェーン全体を考えることが重要になります。これはメーカー単体で考えるのではなく、協働する物流企業とともに練っていく必要があるでしょう。

ボトムアップとトップダウン双方向からの物流改善

メーカーはまず、どのレベルに問題があるかを把握する必要があります。

物流インフラの危機という大きな問題に対しては、実行レベルや計画レベルの改善だけでは解決できない可能性が高いといえます。もちろん、現状業務を肯定し、現場からボトムアップで「改善」することも重要です。物流活動におけるムリ・ムダ・ムラをなくしていくことで、生産性を高めることができるはずですし、物流品質を向上させることで、メーカーの競争力を高めることもできます。

一方で、現状の業務を見直す「改革」も必要で、これはトップダウンの戦略レベルで行う必要があります。ラストワンマイルの問題におけるトラックドライバーの待遇改善などは、サプライチェーン全体の中で検討しなければ解決は難しいでしょう。メーカー内でもSCMやロジスティクス部門だけでなく、営業部門やカスタマーサービス部門も一緒に検討すべきテーマであり役員レベルの関与が必要になるでしょう。