【心がラクになる考え方】仕事も勉強も「モチベーションは下がって当然」

「勉強したいのに、毎日忙しくて時間が確保できない」という人にぜひ読んでもらいたいのが、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』だ。働きながら3年で、9つの資格に独学合格した著者・棚田健大郎氏の「大量に覚えて絶対忘れないノウハウ」を詰め込んだ1冊だ。
1年間必死に勉強したにもかかわらず、宅建試験に落ちたことをきっかけに、「自分のように勉強が苦手な人向けの方法を編み出そう」と一念発起したという棚田氏。苦労の末に「勉強することを小分けにし、計画的に復習する」しくみ、大量記憶表を発明したという。本書の発売を記念し、特別インタビューを実施。「がんばっているのに、報われない人」に共通するNG行動について聞いた。(取材・構成/川代紗生)

仕事も勉強も「モチベーションは下がって当然」

──仕事の合間をぬっての勉強が大変で心が折れそう……という人も多いと思います。「モチベーションが上がらない」という悩みの根本的な原因は何でしょうか。

棚田健大郎(以下、棚田):YouTubeでも、かなり多くの方からいただく質問です。でも、まず前提としてお伝えしておきたいのは、「モチベーションを上げるにはどうしたらいいでしょうか?」とは、残念ながら本質を見失っている質問だ、ということ。これは勉強でも仕事でも、何かを継続する上でとても重要なことなのですが、モチベーションは「下がって当然」なんです。

──えっ! モチベーションをいかに上げるかをいつも考えてしまっていましたが……。

棚田:たとえば資格試験を受験する際、最もモチベーションが高いのはいつかというと、勉強中でも試験前日でもなく、「受験しよう」と決意した瞬間なんです。

このときのモチベーションがピークで、あとは何も対策しなければ試験日に向けて徐々に下降していくだけ。難しい問題の壁にぶち当たったり、はたまた仕事が忙しくてなかなか時間が取れなかったりと、あとはモチベーションが下降する要素しかありません。下がったモチベーションを上げるのは非常に難しく、「一度下がったら上げられない」と思ったほうがいいです。モチベーションは、上げるものではなく「下げないもの」。これが、継続のコツだと思ってください。

──なるほど……! 特に、社会人の勉強は継続が本当に難しいですよね。仕事や家事との両立も大変ですし。

資格試験はモチベーションが9割

棚田:学生時代にうまくいった方法を、そのまま社会人としての学習に応用している人はとても多いので、まず「学生時代と取るべき戦略を変えよう」と認識するだけでも、大きな変化です。

高校受験や大学受験は、周りにも一緒に頑張る仲間がいるので、勉強に集中しやすい環境が整っていますよね。みんな同じタイミングで入試を受けることが決まっているから、お互い刺激し合いながら受験日当日までたどり着くことができる。

一方、資格試験は基本的に、誰かに強要されて受験するわけではないし、一定の年齢になったら一斉に受験する、というものでもありません。将来を見据え、「スキルアップしたい」と思ったときに受験を決意する、という場合がほとんど。ですから、一緒に戦う仲間もいなければ、周りの緊張感や温度感に引っ張られてがんばることも基本的にはできないわけです。

いつ始めてもいいし、いつやめてもいい。受験を諦めても誰かに責めらたり、置いてけぼりを食らったような気分になるわけでもない。孤独との戦いなんですよ。これが、資格試験をクリアする難しさなんです。

──たしかに。合格できなかったとしても、「まあまたいつでも受けられるし、仕事が落ち着いてからまたチャレンジしよう」と諦めて、そのまま結局ずっと受験しなかった……という人も多いですよね。

棚田:そうそう。だから、「不合格者」って、目に見える数よりもずっとたくさんいるんだろうな、と思うんです。たとえば、「宅建試験、今回の不合格者数は◯人」という数字を見ると、その数の人だけがチャレンジしてダメだったように思えるけれど、本当はそうじゃない。

その数字の裏に、「宅建試験に合格したい」と思って勉強を進めていたはずなのに、仕事が忙しくなったり、問題集を開かなくなってしまったりと、さまざまな理由で途中脱落してしまった人がものすごくたくさんいるはずなんです。「試験会場にすら行けなかった不合格者」が。

事実、2020年度の宅建試験に申し込んだ約20万人のうち、実際に受験した人は82.8%だったんです。「お金を払って申し込んだのに受験しなかった」人がなんと2割弱もいたんですよ。