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【Twitterフォロワー30万人超の精神科医が教える】<br />お金を残すのでも、名を残すのでもなく、もっとも大切なこと

疲れていると生まれがちな発想

まれに、「後世に名を残したい」ということを目標にしているという人がいます。もしアナタがそういう思考の持ち主だったら聞いてほしいのですが、そもそも後世には自分自身は存在しません。どこまでいっても想像上の話ですから、考えてもしょうがないともいえます。

後世よりまずは現実、いかにいまを充実させて幸せに生きるかのほうが大事ではないでしょうか。さらにいうと、なんとなく現在うまくいっていなくて、ちょっと諦め気味の場合に、後世に名を残したいという発想になるんじゃないかと思います。目の前の現実に疲れていたり、辛かったりすることに目を背けたくて、誰もが検証不可能な「後世」を持ち出してくるというわけです。

名を残したいと考える人が見失うこと

「防衛機制」という言葉をご存じでしょうか? 自分にとって受け入れがたい現実や葛藤を抱えたり、危険や痛みを予感したりしたとき、無意識に自分を守ろうとする心の反応です。人は心のなかで目の前の現実を否定すると、それをほかのことで補おうとしがちなのです。後世に名を残したいという発想も、その一種かもしれません。

防衛機制そのものは、心の平静を保つために必要なことですから、否定されるべきものではありません。しかし、後世に名を残すことが目的化すると、目の前の現実をなおざりにしてしまう可能性が高まります。いちばん大切な「いま」をなおざりにすると、あとからふり返って後悔することにもなりかねません。

それではもったいないので、後世に名を残したいという発想が頭に浮かんだら、まず「自分は疲れているんじゃないだろうか」と考えてみてください。現実に名を残した人は、あくまで目の前の現実とその延長線上にある未来をよくしたいと思って尽力したはずです。なによりいまやりたいことに打ち込んで、それが評価され、結果として名を残したのでしょう。

お金を残すのは下、仕事を残すのは中、
なら最上の生き方とは?

最初から名を残そうというモチベーションで行動するといまがなおざりになりますから、逆効果になってしまいます。いまやれることはないかと考えて、行動を変えてみるほうが、より現実的で効果的だと思うのです。

プロ野球で戦後初の三冠王を獲得した名キャッチャーで、監督として4球団を率いて3度の日本一に輝いた故・野村克也さんは生前、「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上」とおっしゃっていました。もともとは、後藤新平という名古屋の医師だった人で、台湾総統府の民政長官、満鉄総裁、鉄道院総裁、東京市長も務め、関東大震災後に帝都復興院総裁として復興に力をつくした政治家の言葉のようですが、野村監督が講演会などでお話になっていたそうです。

仕事をしてお金を残すのは三流、名を残すのは二流、人を残すのが一流ともおっしゃっていたようですが、いずれにしても、目の前の人を育てて後世につなげるということが、なにより価値あること。先人の教えに従って、目の前の現実をとらえ直してみるのもいいかもしれません。

『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』(ダイヤモンド社)には、不安や悩みを解消するヒントが満載です。