「教える」より「教えてもらう」からこそ、
相手に伝えることができる

 海外での活動で、現地の人たちに快く迎え入れてもらうにはどうすればよいのか。大村さんが大事にしたのは「教えてもらう」姿勢だった。

「まずはミャンマーの文化を教えてもらうところから始めました。踊りやミャンマー語を習って、そのお返しに日本語や日本の文化を伝える。はじめは僕を警戒していた人たちも、こちらが『教えてください』と言うと心を開いてくれます。なにより相手の文化に興味を持っていることが伝わると、喜んでもらえますよね」

 医療環境が劣悪な病院に行き、支援をする。普通であれば「教えてあげよう」という上から目線になってしまってもおかしくない。そこを、あえて「教えてもらう」姿勢に徹するようにしたのだ。現地の医療についても「教えてもらう」姿勢で、それまで「全く信じていなかった」という東洋医学も学びに行った。

「看護師さんが歯の痛みを訴えたので、鍼治療をしている先生のところに行って打ち方を教えてもらいました。言われた通りにやってみると、ピタッと治ったんですよね。私が学んだ西洋医学の考えとは違いますが、現地の人たちが大事にしている伝統医学は、やはりそれなりの効果があるからこそ受け入れられている。それを教わることが、現地の人たちを理解することにもつながると思ったのです」

「教わる」姿勢のない人は、「教える」ことができない地元の鍼灸医院へ鍼を学びに。なんでもやってみるのが大村さん流

「教えてもらう」姿勢で、現地の人たちから信頼してもらえるようになった大村さん。すっかり打ち解けたスタッフたちからは、ミャンマー語で「力持ちの先生」という意味の「サヤー・バラー」の愛称で呼ばれるようになっていた。