コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。
2005年から、ほとんどの金融機関で
投資信託が買えるようになった
投資信託を購入しようと思ったら、直接私たちがやりとりするのは「販売金融機関」です。証券会社や銀行など、投資信託の販売窓口となる金融機関のことです。
かつて、投資信託を販売している販売金融機関は証券会社だけでした。
しかし、90年代からのバブル崩壊によって株価が急落し、株式市場が低迷したため、市場活性化の一環として、「証券会社には行かない層にも買ってもらえるようにしよう!」と、1998年に、銀行や保険会社でも投資信託を販売できるようにしたのです。
それ以来、投資信託は幅広い金融機関の窓口で購入できるようになり、2005年からは当時の郵便局、現在のゆうちょ銀行でも、投資信託の販売が解禁されました。
これにより、株式とは違って、投資信託はほとんどの金融機関で購入できるようになったのです。ほかにも、実際の店舗を持たないネット証券や、ネット銀行でも購入できます。
つみたてNISAを始めようと思ったら、「販売金融機関」でつみたてNISAの口座を開き、その金融機関で扱っている商品を購入します。
投資信託を作り、運用するのが「投信運用会社」
次に、投信運用会社(投資信託委託会社とも言います)の役割について説明しましょう。
投資信託という金融商品は、投信運用会社なくしては存在しません。数々の投資信託は、投信運用会社が企画設定し、運用しています。
投資信託の運用責任者がファンドマネジャーであり、彼らの仕事を支えるために分析などの仕事をするアナリストが複数おり、チームを組んで、個人から集めた資金の運用戦略を立案し、実行していきます。
そして、株式などの売買注文は、証券会社に出すわけではありません。間に信託銀行が入っています。
投信運用会社のファンドマネジャーは、信託銀行の担当者に対して、「この銘柄を買ってくれ」「あの銘柄を売ってくれ」というように指示するのが仕事です。そして信託銀行の担当者は、ファンドマネジャーから言われた通りに、忠実にその注文を執行していきます。
またここ20年の傾向として、日本の投信運用会社でも海外市場の動向に注目せざるを得ない状況が続きました。というのも、90年代から2000年代前半にかけて、日本の株価低迷が続く一方、諸外国の株価が大きく上昇したため、外国株式を組み入れて運用する投資信託が増えたのです。
加えて、日本の超低金利が長期化する中で、相対的に高い外国債券の金利が注目され、外債ファンドの新規設定が相次ぎました。
しかし、多くの日本の投信運用会社は、積極的な海外展開を行わなかったため、海外から入ってくる情報量が少なく、海外のマーケットで運用する投資信託を独自に設定せず、海外の運用会社に運用を外部委託する傾向が強まりました。
あるいは直接、株式や債券を買うのではなく、これらの投資対象を組み入れた、複数の海外ファンドを組み合わせるファンド・オブ・ファンズ形式(後ほど解説します)の投資信託もあります。
ちなみに2021年12月末時点、日本国内で投資信託を設定・運用している投信運用会社の数は、全部で107社です。
この投信運用会社の資本関係を見ると、大半が金融機関の子会社として設立されています。証券会社だけでなく、メガバンクや地方銀行、各種共済組合も、系列の投信運用会社を持っていますし、外資系もあります。
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。