自分で手を動かし、何かモノをつくることが好きな人なら、一度は「自分のお店を持ちたい」と思うこともあるだろう。昨年11月にスタートした「BASE(ベイス)」は、ネット上でそれを実現してくれるサービスで、12月末時点で既に1万店舗以上が登録されている。

 BASE最大の特長は“とにかく簡単”にネットショップを開店できること。これまでのネットショップの作成は、商品情報を更新したりネットで決済を完結させたりする仕組みを導入する必要があるため、ウェブ開発に関する知識や経験、また外部の制作会社に委託する予算がない事業者にとっては、なかなかハードルが高かった。

BASEのホームページ。「ショップURL」「メールアドレス」「パスワード」を入力するだけでECサイトを持つことができる

 BASEでショップを開設するのに必要な情報は、「ショップURL」「メールアドレス」「パスワード」の3つのみ。800種類以上のパターンが表現可能なデザインを備え、独自性を訴求できるショップを作成することが可能になっている。

「これまでECサイトの制作・維持には月、数千円から数万円かかっていたが、その敷居を下げたかった」と語るのは、BASE株式会社 代表取締役 鶴岡裕太氏。

 ネットショップ制作の敷居が下がったとした今、BASEではいったいどんな物が売られ始めているのだろうか? 鶴岡氏に話を訊いた。

「いまのところ、半分くらいが企業の商品。そしてもう半分くらいが、これまで日の目を見ることの少なかった、アーティスト、画家、陶芸家や農家など、個人でモノづくりをしている人たちの商品です」。自分で書いた書籍のデータや、自分で制作した衣服も売買されているという。

 BASE運営チームの目指すところは、「ユーザーのまわりの小さな経済圏をつくる」(鶴岡氏)ことだそうだ。同氏が挙げてくれたひとつの例が、バンドの楽曲。しっかりとしたファンが付いているインディーズのバンドは少なくない。“直接バンドのメンバーを応援したい”“つながっていたい”というファン心理から、BASEでは実際に、バンドの楽曲がよく売れているとのことだ。

 個人の商品が売買される――ここで思い出すのが昨年末発売され話題になった、クリス・アンダーソン氏による『MAKERS』だ。同書では、誰もが設計者となり、自分の机の上でモノづくりを行ったり、さらにはウェブでコミュニティをつくり、クラウドファンディングでお金を集めてメイカーになったり、といった時代が到来する――そんなモノづくりの未来が書かれている。

 BASEでの流通総額は、昨年末までに約1000万円。BASEはこうした個人でモノづくりを志す人々(=メイカー)にとっての貴重な窓口に進化していきそうな土壌がある。

 いまのところ、BASEでの出店者からはクレジット決済手数料以外には一切お金をもらっていない。マネタイズについては、「BASEのコミュニティが大きくなってから考えたい」と言うが、最初の目標は流通総額3億円だ。

 出店者の周りの小さな経済圏をつくるということをミッションに掲げているBASEのサービスは、ウェブやモノの売り方に関するノウハウがないために苦労していた、腕のある個人に新しい働き方を提供していくのかもしれない。

(岡 徳之/tadashiku & 5時から作家塾(R)