丸紅が米国のガビロン穀物事業を売却する。長年、「穀物メジャー」への仲間入りをもくろんできたが、ガビロン売却で夢は頓挫した。しかし、歩みを止めている暇はない。特集『商社 食料部門の悲哀』(全7回)の#4では、丸紅復権に向けた“試金石”を探った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
丸紅がガビロン穀物事業を売却
穀物メジャーへの夢は途絶える
「2010年ごろ、丸紅の東京・竹橋旧本社に、ひそかにガビロン買収チームが結成された。社内から集められた人は全員優秀で、使命感にも燃えていた。あの熱気は忘れられない」――。
丸紅の穀物部隊に在籍していたある関係者は感慨深げに振り返る。
「穀物メジャー」の仲間入りを長年目指していた丸紅。13年に約2700億円で米国の穀物大手ガビロンを買収したことで、“夢”に一歩近づいた。
しかし、渾身の“賭け”は失敗に終わった。当初から高値づかみを指摘されていたことに加え、ガビロン関連で巨額の減損を相次いで計上。社内外からガビロンに冷ややかな視線が注がれた。
ガビロンを管轄する営業部だけでなく、財務部でも必死に手当てが行われ、「金融機関も巻き込んだ借り入れ要請や、(対象の資産や負債を貸借対照表に計上しない)オフバランスの模索なども行っていた」(別の丸紅関係者)。
22年1月、穀物市況の上昇という追い風が吹くタイミングで、丸紅はカナダのバイテラ社にガビロン穀物事業の売却を発表した。
今年度中に運転資金も含め、3000~4000億円の回収を予定しており、数百億円の売却益を見込む。ガビロン売却で、当初描いた「穀物メジャー」への夢が途絶えた。
ただし、今の丸紅に歩みを止めている暇はない。
次ページでは、ガビロン売却後の丸紅復権に向けた道筋とともに、“試金石”となる事業を探る。そして、決算資料には掲載されていない試金石事業の「現在の利益額と5年後の見通し」も公開する。