総合商社が「サーモン陸上養殖」に熱を上げている。三井物産や伊藤忠商事、丸紅に続き、三菱商事も参入を表明した。しかし、回転ずし最大手のスシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESのトップからは“ダメ出し”の声が上がる。特集『商社 食料部門の悲哀』(全7回)の#1では、商社の食料部門が抱える“悲哀”に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
総合商社がサーモン陸上養殖に熱視線
スシロートップが“ダメ出し”
「われわれの陸上養殖サーモンを使ってみないか」――。
2022年3月、東京都内の飲食店に三井物産の担当者が売り込みに来た。
三井物産は17年、千葉県木更津市の陸上施設でサーモンの養殖を手掛けるFRDジャパンに80%出資した。この店で採用とはならなかったものの、新たな商材の買い手を探して今、活発な売り込みをかけているという。
大手総合商社の食料部門が、今こぞって熱を上げるのが「サーモンの陸上養殖」だ。国内では三井物産を皮切りに、伊藤忠商事と丸紅が続き、22年6月にはついに三菱商事も参入を表明した。
なぜ、海ではなく、“陸”でサーモンを作るのか。
それは海で確保できるサーモンの量に限界が近づいているからだ。制限があるため、既に天然物の漁獲量は頭打ちとなっている。
また、海面養殖にも上限が見え始めた。海でサーモンを養殖する場合、14度程度の低水温が必須条件だ。養殖が可能な海はノルウェーやチリといった緯度の高い国に限られる。そして“好立地”の海は軒並み確保されて既に使われているため、新たな養殖エリアの拡大は難しい。
一方、サーモンの消費量は世界的な人口増加などに伴い、伸び続けるとされている。つまり需給が逼迫しやすく、多く確保できれば稼げる可能性の高い魚がサーモンなのだ。
だからこそ、商社各社はサーモンの陸上養殖を“次なる飯の種”と位置付け、熱い視線を送っている。
ただし、陸上養殖のサーモンが稼げる商材へと化けるためには、大口の買い手が必要だ。
その有力候補である回転ずし最大手のスシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESの水留浩一社長は、陸上養殖サーモンについて異例の“ダメ出し”をする。
次ページ以降では、スシロートップがダメ出しした陸上養殖サーモンの“欠点”とともに、そこから浮かび上がる総合商社食料部門の“悲哀”について解説する。