変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。本連載では、そのために必要なマインド・スキル・働き方について、同書の中から抜粋してお届けする。

【OECD加盟国の労働生産性】1位はアイルランド、2位はルクセンブルク、韓国は24位、日本は…Photo: Adobe Stock

会議はメールのCC機能に、
△△の専門家は人工知能に置き換えられる

 日本は製造現場においては高い生産性を誇り、安くて良い製品を世界中に提供してきました。

 ビジネススクールのオペレーションの教科書には「Kaizen」や「Kanban」といった言葉が普通に使われていて、日本は世界一オペレーション効率が高いと考えられています。

 しかし、実は日本は、下図のとおりOECD加盟国の中でも労働生産性が低い国の一つ(38ヵ国中28位)となっています。

 デジタル化とグローバル化が刻々と進み、先行き不透明かつ変化の激しい時代を生き抜くには、環境に柔軟に対応する必要がありますが、日本はそれに乗り遅れてしまっています。多くの製造現場はコストの低い海外にシフトし、日本に残されているのが製造業の企画・管理部門やサービス業である今、これまでとは異なる働き方が求められています。

 例えば、皆さんの会社でも、情報共有だけの無駄な会議は行われていないでしょうか。

 デジタル化が進む現代では、情報伝達以外の付加価値を出せていない会議は、メールのCC機能に代替されつつあります。

 コロナ禍のリモートワークで、部長席に座っていることでしか価値を示してこられなかった人はZoom会議に呼ばれなくなり、仕事がなくなってしまいます。

 フォロワー数100万人を誇る弁護士の岡野武志氏のように、発信していく力を持たない弁護士や会計士は早晩、人工知能に置き換えられるかもしれません。

掛け算でユニークな存在になる

 20世紀までは「東大卒」のように偏差値競争でトップになったとか、弁護士や会計士などの国家資格を持っていることが重要だったかもしれません。

 しかし、これからは学歴や一つのスキルではなく、それらを掛け算で考える必要があります。

 スキルの掛け算とは例えば、「アーキテクト思考力×日本語×モビリティ」や「インドネシア×アパレル×デジタル」といったものです。

 私の場合には、「東南アジア×経営コンサルタント×ITストラテジスト」のようになります。具体的には、東南アジア諸国の社会課題を解決するための構想を練り、具体的なデジタル戦略まで落とし込むことができます。

 一つの領域でトップを目指すのではなく、すべてのスキルを掛け算で考えたときにユニークな存在になることが重要です。自分でユニークな構想ができれば、世界中の人たちと連携してプロジェクトを推進することも可能になります。

 例えば、私のチームで推進しているプロジェクトでは、インドネシアの社会課題を解決するためにインドネシアのスタートアップや大学、現地政府などと連携しています。コロナ禍だったこともありますが、これらを全てリモートで推進しています。

身につける必要がないスキルを明確に見極める

 経営コンサルタントの大前研一氏は、「財務×IT×英語」がビジネスパーソンには必須と言っています。

 これらのスキルがこれからも大切であることは言うまでもありませんが、これらの多くがデジタル技術と世界中の人たちに代替されてしまう現代には、スキルの身につけ方が変わってきたのではないでしょうか。

 例えば、私はITストラテジストという国家資格を保有していて、基幹システムをゼロから設計して、実装してきました。時間をかけて最新のプログラミング言語やツールをマスターすれば、今でも基幹システムを自ら構築することも可能でしょう。

 しかし、ベトナムの開発会社に委託すれば、私が戦略をもとにディレクションするだけで、低コストかつ迅速に実装してくれます。

 不透明で変化の激しい時代に差別化し続けるには、外部パートナーに任せたほうがいいスキルと自ら身につけるべきスキルとを明確に見極めましょう。調べれば分かるものは調べ方だけを習得し、別のスキルを身につけることで時代に合わせて変化していくのです。

 もっと言うと、本連載のテーマであるアジャイル仕事術の5つの能力である「構想力×俊敏力×適応力×連携力×共創力」を身につけていれば、それ以外は全て外部パートナーに任せられる時代が来ています

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。