開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。
独り言を呟く優秀な子ども
VAMOSで多くの子どもたちを見ていてわかるのは、「優秀なひとりっ子には、独り言を言う子どもが少なくない」ということです。問題を解いているときでも独り言を呟きます。
とくに、「ギフテッド」と呼ばれるような際だって優秀な子どもは、高い確率で独り言を言います。
何を言っているのか内容まではわかりませんが、おそらく自分の中に誰かを置いて、その人に話しかけているのです。あるいは、自分自身と対話しているのかもしれません。
いずれにしても、湧き上がった考えを言葉として表現し、ときに訂正を入れたりしているわけですから、その間、ボキャブラリーは増え、考える力も育っているはずです。
「独り言」や「ごっこ遊び」を封印しない
ですので、わが子に独り言が多くても、それをネガティブに捉える必要はありません。その子は、独り言を言うことで、頭の中に湧き上がっている考えを整理しているのです。
そうした大事な作業を、「独り言はやめなさい」などと止めてはなりません。子どもの頭が途轍もないスピードで動いている可能性があります。
一般的に私の世代は、リカちゃん人形や仮面ライダーなどのキャラクターもので「ごっこ遊び」をしました。そこでは、たくさんの言葉を口に出しましたが、今の子どもたちの遊びはもっぱらゲームです。これも、ボキャブラリー貧困化の大きな原因です。
そこで私は、「絶対にしゃべらせる」を条件に、塾の子どもたちにゲームを許可しています。たとえば、レーシングゲーム「マリオカート」も黙ってやらせず、状況や感情を言葉に出させるのです。
とはいえ、最初は、実に稚拙な言葉しか出てきません。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい!」
「そこ邪魔だよ、どけ」
「さっきのミスが痛かったなあ」
これでも、何も言わないよりずっとマシ。慣れていくに従って、より詳しい状況説明ができるようになるでしょう。面白いことに、順位だけを気にする子、アイテムについてばかり話す子、全体の展開を口にする子など、表現する内容が全然違います。
おそらく、大人でも同様の傾向は見て取れるはずです。ボキャブラリーの少ない大人は、子ども時代に原因があるとも言えるでしょう。
(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)