開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。

「わが子の考える力を伸ばしたい!」親がただ見守るべき「子どもの1つの言動」Photo: Adobe Stock

独り言を呟く優秀な子ども

 VAMOSで多くの子どもたちを見ていてわかるのは、「優秀なひとりっ子には、独り言を言う子どもが少なくない」ということです。問題を解いているときでも独り言を呟きます。

 とくに、「ギフテッド」と呼ばれるような際だって優秀な子どもは、高い確率で独り言を言います。

 何を言っているのか内容まではわかりませんが、おそらく自分の中に誰かを置いて、その人に話しかけているのです。あるいは、自分自身と対話しているのかもしれません。

 いずれにしても、湧き上がった考えを言葉として表現し、ときに訂正を入れたりしているわけですから、その間、ボキャブラリーは増え、考える力も育っているはずです。

「独り言」や「ごっこ遊び」を封印しない

 ですので、わが子に独り言が多くても、それをネガティブに捉える必要はありません。その子は、独り言を言うことで、頭の中に湧き上がっている考えを整理しているのです。

 そうした大事な作業を、「独り言はやめなさい」などと止めてはなりません。子どもの頭が途轍もないスピードで動いている可能性があります。

 一般的に私の世代は、リカちゃん人形や仮面ライダーなどのキャラクターもので「ごっこ遊び」をしました。そこでは、たくさんの言葉を口に出しましたが、今の子どもたちの遊びはもっぱらゲームです。これも、ボキャブラリー貧困化の大きな原因です。

 そこで私は、「絶対にしゃべらせる」を条件に、塾の子どもたちにゲームを許可しています。たとえば、レーシングゲーム「マリオカート」も黙ってやらせず、状況や感情を言葉に出させるのです。

 とはいえ、最初は、実に稚拙な言葉しか出てきません。

「ヤバい、ヤバい、ヤバい!」
「そこ邪魔だよ、どけ」
「さっきのミスが痛かったなあ」

 これでも、何も言わないよりずっとマシ。慣れていくに従って、より詳しい状況説明ができるようになるでしょう。面白いことに、順位だけを気にする子、アイテムについてばかり話す子、全体の展開を口にする子など、表現する内容が全然違います。

 おそらく、大人でも同様の傾向は見て取れるはずです。ボキャブラリーの少ない大人は、子ども時代に原因があるとも言えるでしょう。

(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)