安倍晋三元首相の銃撃事件を発端として、宗教と「政治・カネ」への関心が大きく高まっている。しかし、宗教への無理解が誤解を生む側面も無視できない。そこで、経済メディアならではの視点で新宗教を切り取った週刊ダイヤモンドの特集を再掲し、特集『「新宗教」大解剖』としてお届けする。#11は幸福の科学を取り上げる。ワールドメイトと同じ1980年代創設の新・新宗教の異端児、幸福の科学は試練を迎えている。事業モデルを進化できなければ、衰退の道をたどることになる。
“カネ持ち”教団である幸福の科学
資金力を支える二つの事業
「NASAもハリウッドも持ってない情報を幸福の科学は持っている。“映画”でより多くの人に分かってもらえるよう努力していく」
2018年7月にさいたまスーパーアリーナで開催した恒例の大川隆法総裁の生誕祭。大川総裁は参加した1万9000人の信者たちを前に、宇宙人やUFOの存在について、教団はNASAを超える情報力を持つとして、その普及のための映画事業の重要性を叫んだ。
数々の有名人の「霊言」本で知られる幸福の科学は1990年代以降、スピリチュアルブームを追い風に信者を増やしてきた。
天上界や霊言といっても多くの人は半信半疑に思うだろうが、実は信じる人は年々増加傾向にある。下図の通り、NHK放送文化研究所の調査によれば、「あの世」を信じる人の割合は、73年から13年までの間で倍増している。
とはいえ、幸福の科学が公称する1100万人という信者数は実態を示しているとは言い難い。教団がいう信者数とは、経典「正心法語」の累計授与数を指す。つまり、信者数は増えることはあれど、減ることはない。いわゆる洗礼に当たる「三帰誓願(さんきせいがん)」を行った人数が信者数の実態に近いと思われるが、その数字は非公表。関係者の声をまとめるとコアの信者数は、多くても十数万人と推測される。
それでも宗教法人の年間収入は約300億円ともいわれる“カネ持ち”教団だ。その資金力を支えるのは二つの事業である。
しかし、その幸福の科学を支える事業に暗い影が落ち始めている。さらには、教団が命運を懸けた二つの挑戦に大誤算が起きているのだ。幸福の科学が直面する試練を深堀りする。