「新宗教」大解剖#9

安倍晋三元首相の銃撃事件を発端として、宗教と「政治・カネ」への関心が大きく高まっている。しかし、宗教への無理解が誤解を生む側面も無視できない。そこで、経済メディアならではの視点で新宗教を切り取った週刊ダイヤモンドの特集を再掲し、特集『「新宗教」大解剖』としてお届けする。#9では、新・新宗教のワールドメイトを取り上げる。ライバルである幸福の科学らと一線を画すその独自のニッチ戦略を追う。

「週刊ダイヤモンド」2018年10月13日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

 オバマ氏にナオミ・キャンベル氏…
宗教家・深見東州氏の驚きの人脈

 18年7月末、東京・吉祥寺のホテルで行われた「ブルース・リー祭」なる時計や宝飾品の販売会(下写真)。壇上には香港の有名なアクション俳優のユン・ピョウと並び、このイベントの主催者兼司会者として参加者たちの注目を浴びる人物がいた。

7月末に行われたブルース・リー祭7月末に行われたブルース・リー祭。時計や宝飾品が売られる中、ユン・ピョウ登場で会場は熱狂した。Photo by Hiroki Matsumoto

 半田晴久、またの名を深見東州。時計販売店や学習塾などを経営する事業家であり、同時に宗教法人ワールドメイトの教祖(リーダー)でもある。下図にある写真の人物を、電車内や新聞の広告などで見掛けた人も多いのではないか。

 深見氏はこうした著名人が参加するイベントをたびたび行っている。17年10月には自社の時計店オープン関連イベントで、スーパーモデルのナオミ・キャンベルが登場。同年12月に都内ホテルで行ったコンサートと時計、宝飾品販売イベントでは、米人気歌手のマイケル・ボルトンや俳優のジャッキー・チェンが参加した。

 さらに世間を驚かせたのは18年3月。深見氏が総裁を務めるNPO法人が開催した「世界オピニオン・リーダーズ・サミット」というイベントで、バラク・オバマ前米国大統領が登壇。なお、同イベントでは過去にもトニー・ブレア元英国首相、ビル・クリントン元米国大統領などの大物政治家たちも参加している。

宗教家である深見氏が、政治家や財界人すらうらやむような世界的な人脈を持つのはなぜなのか。そして、電車内や新聞に掲載される広告にギャグが満載なのはなぜなのか。その理由を知るには、深見氏が使い分けている「三つの顔」と、それを生かしたワールドメイトの独自のビジネスモデルを知る必要がある。一つずつ解説していこう。