FIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現すると、人生はどう変わるのか――。会社勤めの傍ら、さまざまな投資で資産を築いてFIREを実現した『年収300万円からのFIRE入門』の著者・西野浩樹氏に話をうかがった。
FIREする前から考える社会保険料
サラリーマンのときは、社会保険料のことを考えなくても会社が全部やってくれます。そのため、給与明細といっても、残業代がいくら支給されて、手取りがいくらかといった程度のことしか見なかったと思います。
FIREしたあとは、社会保険料をどうするかについて自分で考えないといけません。
まず、社会保険料とは何かということですが、社会保険料とは、年金、健康保険、介護保険、雇用保険のそれぞれの保険料のことです。
雇用保険は雇用されなくなるのでなくなります。問題は、年金と健康保険の2つの社会保険料をどうするかです。
ここでは健康保険について考えてみましょう。介護保険料は健康保険料と一緒に引かれるので、健康保険料(介護保険料)として考えましょう。
どの健康保険を選ぶかで、お金の流れが変わる
まず、手続きが必要になるのが、健康保険(介護保険)です。
日本の医療保険制度は「国民皆保険制度」といって、サラリーマンは会社の「健康保険組合」、自営業者は「国民健康保険」、中小企業の従業員であれば「協会けんぽ」など、すべての国民がなんらかの医療保険に加入する決まりになっています。
その際に気をつけなくてはいけないのが、それぞれの保険に特徴があって、選び方を間違えると、お金の流れが大きく変わってくるということです。
1つのポイントとして、会社の健康保険組合と中小企業の協会けんぽには「扶養」という概念があり、扶養に入った人は、基本的に保険料を払わなくてもよくなる、ということがあります。
一方で、国民健康保険には「扶養」という概念がないため、家族が4人いたら、4人分の保険料がかかります。
おひとり様や夫婦だけの場合は、それほど影響しませんが、家族が多いと大変なことになります。それを踏まえて、FIREするときには3つのパターンが考えられます。
②都道府県市区町村運営の国民健康保険に入る(家族全員分の国民健康保険に入る)
③不動産賃貸業などの法人をつくって、協会けんぽに入る(自分が被保険者になって家族全員を扶養に入れる)
こんなに違う月額の保険料
私は、この中で③の協会けんぽを選びました。
具体的には、自分の法人からの役員報酬を月額6万円に設定して、家族を扶養にすることで、保険料として月に約3000円を払います。自分の法人からも約3000円を払うことになりますが、これは会社の経費になります。
私のまわりのFIRE組も③を選んでいる人が圧倒的に多いようです。
ちなみに、②の家族4人分の国民健康保険に入ると、保険料は約3万8000円になる計算でした。約12倍です。
1ヵ月で約3万8000円ですから、1年だと約45万6000円も払う必要があり、大変なことになります。
すぐに決められないときは、とりあえず今の会社の健康保険を任意継続する方法もあります。
任意継続すれば、2年間は会社員時代の保険証をそのまま使うことができます。ただし、任意継続の手続きは退職日の翌日から20日以内に済ませる必要があるので、注意が必要です。
また、任意継続の場合は、労使折半だった保険料が折半ではなくなるため、保険料は単純に2倍になります。この段階で、会社員だったありがたみを感じる元サラリーマンも多いようです。
会社を辞めたことを銀行に黙ったまま、任意継続期間中に融資を受けようとすると、銀行によっては社員証や健康保険証の提示を求めてくる場合があります。
そのとき、健康保険証には「任意継続」という印字がされるので、銀行に会社を辞めたことがすぐにばれてしまいます。ウソはやめましょうね。