ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。
ストレートな言い方は、相手のやる気を奪う
「こら! のび太! 遊んでいないで勉強しなさい!」
子どもの頃、「ドラえもん」を見ていて、のび太のママのセリフに耳が痛かったことを思い出します。
この後、「今やろうと思っていたんだよ~」「あんな言い方されるとやる気なくなるよね、ドラえもん」とのび太の言い分は続くのです。そこでまたドラえもんに叱られるわけです。
夏休みの宿題を夏休み終盤でやるタイプの私は、のび太の気持ちがよくわかりました。親に「早く宿題やっちゃいなさい!」と言われると、途端にやる気がなくなります。
「遊んでばかりいるな」「部屋を片付けなさい」「ゲームは1時間」など、わかっているけど、そんな言い方をされると反発したくなる経験は誰にでもあるでしょう。
このときに生まれる反発心を、心理学では「心理的リアクタンス」と呼びます。
これは自分の自由が奪われたと感じたときに、それを回復しようとして生じる心理作用であり、アメリカの心理学者ジャック・ブレームが提唱したものです。
人には「自分のやることは自分で決めたい」という欲求があり、「自分で勉強をしよう」と思っているタイミングで「勉強しなさい」と言われると、自分で決めたことではなく誰かに決められたことを強制されていると感じ、無意識のうちに抵抗してしまいます。
自分にとってどんなに有益な話でも、強制されたと感じる心理現象で、「遊んでいないで勉強しなさい!」といわれると、途端にやる気がなくなるわけですね。
このような心理現象は親子間だけで起こるわけではありません。ビジネスシーンでも同じです。相手を説得しなければいけないとき、「こうしなさい!」とストレートに言っても、素直に聞いてもらえないですよね。
こんなとき、受容・共感・承認の3ステップが効果を発揮します。
まず、相手の立場に立って考えることです。ただ説得しても相手は話を素直に聞きません。まずは相手の頭の中を想像するのです。
たとえば、相手のモチベーションが下がっているときに「やる気を出しましょう!」とストレートに言うのではなく、相手の思考を想像します。
「何か仕事に集中できない理由があるのだろうか」
「何か悩んでいることでもあるのだろうか」
こうすると、ストレートに思ったことをそのまま口にすることは減ります。
「何かあったのですか?」と、相手の話を聞くことで、気持ちを受け止める(受容)ことができます。
次に、理由を聞いて「その気持ち、わかります」と、相手の考え方を理解する(共感)ことです。人は共感してもらうと聞く姿勢が整います。もし、自分と考え方が違っても感情の部分だけ共感すれば問題ありません。
そして、最後に、相手の想いを言葉にする(承認)ことです。
「仕事がつまらないからやる気が起きない」という相手の気持ちを受け止めた後に、「そうですよね。楽しく仕事をしたいですよね」と、相手の言葉を利用して返すのです。
すると、相手は「そうですね」とこちらの考えに共感する「イエス」で返事をします。そのあとは、「そうですか。では、そのためにどうすればいいかを考えましょう」と導くのです。
これは「自分の言葉を受容してくれている相手」と「その相手の言葉に共感している自分」の構図になり、相手はあなたを味方と錯覚するのです。
ストレートな言い方は、相手のやる気を奪います。「この人は味方じゃない」と壁を作られてしまいます。だからこそ、この方法は効果的なのです。
相手の言葉を利用し、「そうですね」を引き出せれば、心理的リアクタンスを起こさせず、相手を導く一歩目になるのです。
(本原稿は、日々のコミュニケーションがラクになる36のノウハウが詰まった書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)