Z世代のモチベーションとは?
富永:私は、塾とは別に、サッカー選手の代理人の仕事をしているんですが、いわゆるZ世代の選手は、今までの選手と全く価値観が違います。
私が関わっている選手では、日本代表の試合にも出ている田中碧(たなか・あお)選手などが典型です。彼は、競争心の乏しいひとりっ子で、親から与えられたいろいろな機会の中から「好き」で選んだサッカーを続け、日本代表にまでなりました。
モチベーションの源泉が競争心ではなく、「自分はこれが得意」「自分はこれが好き」というものを突き詰めて、大きく成長していく若者が、これからは増えていくだろうと思っています。
競争心やハングリーさみたいなものがないからといってダメなのではなく、「競争意識が欠けているなら、競争心以外の推進力で突破する」という考え方です。
進学塾VAMOS代表
幼少期の10年間を、スペインのマドリッドで過ごす。京都大学経済学部を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生・浪人生まで通塾する「進学塾VAMOS(バモス)」を設立。現在吉祥寺、四谷、浜田山、お茶の水に校舎を構える。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年塾生を難関校に合格させ、その指導法は、「プレジデントファミリー」「アエラウィズキッズ」「日経キッズプラス」などでも取り上げられる。自身の海外経験を活かして、帰国子女の教育アドバイスにも力を入れているほか、トップアスリートの語学指導、日本サッカー協会登録仲介人として若手選手の育成も手掛けている。著書に『ひとりっ子の学力の伸ばし方』など多数。
個性が重視される時代
五百田:確かにスポーツの世界もわかりやすく変わってきていますね。昔の高校球児といえば、朝から晩まで地獄のように練習する、何百球でも投げるっていう根性の世界が強調されていましたけど、今では「一人ひとりの才能を大事にする」風潮が強くなっているんじゃないかと思います。
受験や勉強の世界でいえば、私は東大のテニスサークルの学生たちと定期的にテニスをする機会があって、よく話をするのですが、彼らと話していても「ギラギラした競争意識」といった雰囲気を感じることはまるでありません。
本当にみんな物腰が柔らいんです。そして、他人を気にせず、自分の得意なことをやるという意識で学生生活を送っていたり、将来を考えている東大生が多いと思います。