「自分」は約2.7億円の価値を持つ最大の資産

──いや、ちょっとガツンと殴られた気分です。どうしてもこれまでの経験上、「資産=日本円」というイメージが強すぎて。現金以外のものも含めて資産形成するという発想がなく、「円で持ってないと意味ないじゃん」みたいに思っていたので。必死で働いていると、そもそも、生活資金もなくカツカツ……みたいなこともありますし。

奥野:もちろん、とくに20代、30代の若い頃は、必死で働くのも大切なことだと思います。ただ、覚えておいてほしいのは、アセットの中には、「自分」自身も入っているんですよ、ということ。

──アセットの中には、「自分」自身も入っている。

奥野:実は、人間が持ついちばん大きな資産は、「金融資産」ではなく「自分資産」なんです。大学卒・大学院卒のフルタイム正社員の60歳までの平均生涯賃金は、男性で約2.7億円、女性で約2.2億円ですからね。すごい資産じゃないですか?

──たしかに。

奥野:でも、この約5ヵ月間、日本円が約3割も減価していますよね。これを生涯賃金に照らし合わせて考えると、単純計算になりますが、2.7億円のうち30%、つまり8100万円分の購買力が飛んじゃうっていう話なんですよ。超怖くないですか?

──8100万!? 超怖いですね。

奥野:でしょ(笑)。

──そう考えたら、「投資は怖い、真面目にコツコツ働いて貯金するのがいちばん」とか、言ってる場合じゃないというか。

奥野:そうそうそう。「PL(損益計算書)的発想」の人は、「自分が持ってる10万のうち、3万も損した」みたいな、ものすごく小さなことで騒いで、焦って銘柄を売り買いしてるわけです。でも、「10万のうち3万が飛んだ」なんて、「2億7000万のうち8100万が飛ぶ」って話にくらべたら、全然たいしたことじゃないんですよ。

──目先の何万とかで一喜一憂する人は多いけど、でも、そっちばっかり気にしてるうちに、将来の何千万を失ってるかもしれない。

奥野:ってことです。というか、もうすでに失っているってことです

 だからこそ、「時間」「お金」「才能」の3つの資産を何にどう投資するか、総合的に考えないといけないんです。「お金はお金」と分けて考えるんじゃなくて、自分で稼ぐ「自分資産」、自分以外の人に稼いでもらう「金融資産」、どちらも合わせて考え、「ジブン・ポートフォリオ」を組むこと。

 自己投資、金融投資を自らデザインし、着々と実行することで、会社に左右されない「会社ニュートラル」な自分、日本に左右されない「日本ニュートラル」な自分に近づけます。それこそが、ビジネスパーソンとしての、真の自立なのだと、私は思っています。

【大好評連載】
第1回 「必死に働いてもお金持ちになれない人」の特徴ワースト1

奥野一成(おくの・かずしげ)

投資信託「おおぶね」ファンドマネージャー

なぜ、「真面目にコツコツ働く人」ほど損をしてしまうのか?

農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『ビジネスエリートになるための 投資家の思考法』『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(いずれもダイヤモンド社)など。

 

投資信託「おおぶね」:https://www.nvic.co.jp/obune-series-lp202208
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