トップ企業には「従業員が働きやすい環境」はいらない

──「会社にいることが心地いい」というのは、「働きやすい」とはまた違う?

奥野:働きやすいとかじゃないですね。「誇りを持っている」っていうことかな。そこで働いている自分が好きなんですよ。

 私は、従業員がもっとも能力を発揮できるのは、誇りを持てる場所だと思うんです。ラクに働ける環境を用意することが、経営者の仕事じゃない。従業員が誇りを持てる環境を用意しないといけないんです。

 だから、「みんなが導入してるし、とにかくテレワーク導入すればいいんじゃないの?」みたいな、ダラダラ流される企業は、成長しないですよね。テスラのイーロン・マスクが「全員出て来い」って言うみたいに、従業員に対して「能力を発揮できる環境」を用意できるのが、トップの企業なんですよ。

──本当の意味で「居心地がいい」というのは、ラクな環境じゃなく、誇りを持てる環境。なるほど。

奥野:従業員のために会社があるわけじゃない。顧客のためにあるんですよ。経営者がそこをわかっていないと、確実にダメになりますよね。

 それに、従業員は道具じゃないんですよ。仲間なんですよね。「顧客がいちばん大事」というのは絶対にブレない部分だけれど、かといって、従業員は道具でもない。従業員とチームを作り、顧客の問題解決に奮闘する。それこそが企業の本質じゃないですか。

 本にも何度も書いていますが、お金とは、そもそも「企業や個人が顧客の問題を解決した対価」です。より大きな問題を、より大きく解決してくれた企業や個人のところに、お金は集まる。

 だから、人手不足で困ってるから、ガス抜きに飲みに連れていくとか、超ナンセンスですよね(笑)。そんなことをしてる暇があったら、一つでも多く、顧客の課題を解決する方法を考える。そうやって世の中に価値提供ができる会社には、課題解決の「ありがとうのしるし」として、たくさんのお金が集まります。

「自分はたくさんの人の役に立てているんだ」「価値を提供できているんだ」と、従業員が誇りを持って働ける環境をつくること。トップ企業の経営者ほど、その重要性をよくわかっているのだと思います。

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奥野一成(おくの・かずしげ)

投資信託「おおぶね」ファンドマネージャー

「トップ1%企業」の社員が口を揃えて言うこととは?

農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『ビジネスエリートになるための 投資家の思考法』『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(いずれもダイヤモンド社)など。

 

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