答えのない時代に、メモが最強の武器になるーー。
そう言い切るのは日本一ノートを売る会社コクヨで働く下地寛也氏だ。トップ社員である彼自身が、コクヨ社内はもちろん、社外でも最前線で働くクリエイターやビジネスパーソンにインタビューを重ねてきた。そこから見えてきたことは、
◆トップクラスの人達は、メモを取り続けていること
◆そして、頭の中で考えるのではなく、書きながら考えていること
だった。
この連載では、『考える人のメモの技術』の著者である下地氏が、実際に集めたメモをベースに、あらゆる問題解決に効くメモ術を紹介していく。

「ただのメモ魔」と「仕事ができるメモ魔」は一体何が違うのか?Photo: Adobe Stock

メモを取る人を観察して気づいたこと

 今回、『考える人のメモの技術』という書籍を出版しましたが、この企画をする以前から、私はちょっと面白いメモを取っている人を見つけては、「どのようにメモをとっていますか?」を聞くようにしていました。

 メモがどのように「考える力」を高めているのか、そのメカニズムを知りたかったからです。ところが、そういう風に聞くと、皆さん「別に普通ですけど」と答えます。しばらく考えてから説明してくれる人がほとんどでした。

 つまり、無意識に身につけたメモのコツというのが、さまざま存在するのだろうという考えにいきつきました。

メモ魔でもアウトプットに活かせていない人の特徴は?

 メモ術についていろいろ話を聞いていくと、物事をしっかり考えられる人はほぼメモ魔ということがわかりました。

 しかし、メモをしっかり取る人が必ずしも考える力があるとは限らないのです。ここが面白いところですね。

 よく仕事ができる人はほぼ読書家だといいますが、本をたくさん読む人が必ずしも仕事ができる人とは限らないのに似ています。

 多くの人が、ただツラツラと打合せの内容を書いただけのメモや、ポイントが絞り込めていないメモになっています。つまり、メモは取るが活かす方法を考えていないというわけです。メモにしても読書にしても、仕事ができる人はインプットをアウトプットに変える変換装置を持っています。

メモを考える力に活かす変換装置とは

 では、メモで得たインプットを自分のアウトプットに活かせる人はどう違うのでしょうか? 主に2つのことを意識しています。

 1つ目は、情報を取捨選択してメモしているということです。

 すべてをメモするのではなく、自分の活用したい情報と面白いと思う情報だけを抜き取るようにしています。主体的に情報の選別をすることが「考える力」を高めているということでしょう。

 2つ目は、その取捨選択した情報に対して気づきを加えているということです。

 気づきと言っても、何か驚くような発見をするということわけではありません。「この情報は、ここが上手くいくポイントだな」とか「また、このミスが失敗につながったか」とか、物事の成功パターン、失敗パターンを探しているわけです。

 このパターンを見つけることが、アウトプットへの橋渡し(つまり変換装置)になります。

 皆さんも、「あのとき聞いた話はこの提案にも活かせるな」という感じで、過去に経験したことからヒントを得てアイデアを出すことがあるでしょう。

 つまり、普段から情報を取捨選択し、そこから得られるパターンは何かを考えるということがアウトプットの質を高める考える力になるわけです。

(本原稿は、下地寛也著『考える人のメモの技術』から一部抜粋・改変したものです)