答えのない時代に、メモが最強の武器になるーー。
そう言い切るのは日本一ノートを売る会社コクヨで働く下地寛也氏だ。トップ社員である彼自身が、コクヨ社内はもちろん、社外でも最前線で働くクリエイターやビジネスパーソンにインタビューを重ねてきた。そこから見えてきたことは、
◆トップクラスの人達は、メモを取り続けていること
◆そして、頭の中で考えるのではなく、書きながら考えていること
だった。
この連載では、『考える人のメモの技術』の著者である下地氏が、実際に集めたメモをベースに、あらゆる問題解決に効くメモ術を紹介していく。
危機感がメモの習慣を身につけさせた
私はノートを日本一売る会社、コクヨで30年以上働いています。コクヨと聞くと、メモ上手なイメージを抱くかもしれませんが、私もはじめからしっかりとしたメモを取れたわけではありません。
字は汚いですし、書くスピードも遅く、打ち合わせメモを上司に見せても何がポイントかわからないと言われたことも多々あります。
私自身がメモの重要性を実感したのは今から20年ほど前、コクヨのオフィス研究所(現ワークスタイル研究所)に異動になったことがキッカケです。それまでは商品の提案、手配、納品の仕事をしていましたが、研究所は知的アウトプットをする部門です。
異動したとたん、自分の思考の浅さに愕然としました。周りの人の会話に全く入っていけないのです。思いつきの発言をしても、根拠も事例も面白味もない薄っぺらい話になってしまうのです。
これはヤバいと思った私は、とにかくなんでもノートにメモをするようになりました。
メモで自分の発言が変わり始めた
海外の先進的な事例があればメモ、先輩のためになる話を聞けばメモ、本を読んで引用で使えそうな文章があればメモ、わからないキーワードがあれば「?」をつけてメモ。
メモをしてわかったことは、自分の考えがしっかりとまとまるようになってきたことでした。メモを書くと頭がスッキリします。何が大切で何が不要な情報かを判断できるようになっていきました。
以前は、抽象的でキャッチーなカタカナ言葉(「モチベーションが大切だ!」みたいな)や、上司に言われた一言に引っ張られて、受け売りのような話しかできていませんでした。
しかしメモの習慣が身につくと1年ほどで自分のアウトプットの質は劇的にあがりはじめました。会議でも要点を押さえた発言ができるようになり、いろんな会議に呼ばれるようになったのです。
サラリーマンをしながら本を10冊、アウトプットできるまでに
その後も、同僚から相談されることが増えていきました。
コクヨが主催する顧客向けセミナーの全体とりまとめを任され、セミナー講師にアドバイスをする立場にもなりました。
情報発信する機会も増え、ビジネス書を出版する機会をいただけるようになりました。今回書い
『考える人のメモの技術』で10冊目ですが、1冊の本をまとめる上でも、メモする習慣を持つのはとても大切です。
ビジネス書には、著者の経験や実績に基づいた事例が必要です。これはメモの習慣なしではできません。皆さんもメモの習慣をつけることでアウトプットは変わってくると思います。
これは私が体験した事実ですので、ぜひ挑戦してみてください。
(本原稿は、下地寛也著『考える人のメモの技術』から一部抜粋・改変したものです)