短時間で成果を出している人がいる一方、頑張っているのに成果が出ない人もいる。この違いは何だろう? 経営の最前線で20年以上、成果上げられる人と上げられない人の差を研究してきた人物がいる。
東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の木下勝寿社長だ。発売前から「やる気に頼らず楽しく続けられる」と話題なのが注目の新刊『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』。本稿では、本書より一部を抜粋、「最短時間で最大の成果を出す方法」を初公開する。

「いつもチャンスをつかめる人」だけが知っている【“たまたま”でなく“いつも”】の法則

ラッキーとしか言いようのない
受注を繰り返せる理由

 チャンスを確実につかむ方法がある。

 マンガや物語のサクセスストーリーを読むと、こんな話に出会う。

 横断歩道を歩いているおばあさんの荷物を持ってあげたら、実はその人は大富豪で、主人公のピンチに資金援助をしてくれ、大成功した。

 私のリクルートの営業時代の同僚A君は、マンガのようなサクセスストーリーを地で行く人だった。

 彼は普通では考えられないチャンスに次々恵まれた。

 当時、不景気にもかかわらず、新規の大型商談を次々にまとめあげた。

 どんなにがんばってもうまくいかなかった私は、A君にどうやって大型受注したのかを尋ねた。

 するとA君はこう答えた。

「相手先を訪問したら、朝早かったので、社員さんが全員でラジオ体操をしていたんだ。

 社員たちがけだるそうにやっていたので、最初はジッと見ていたんだけど、だんだんイライラしてきて、みんなの前に出て俺が見本を見せたんだ。

 そうしたら、普段は午後に出社する社長がたまたまいたらしく、俺を見て、『面白いヤツだな。社長室に連れてこい』と言ったらしい。

 それで社長が『おまえ、面白いからこの仕事、全部任す』と鶴の一声で発注してくれたんだ」

 ラッキーとしか言いようのない話だった。

 私が取引先でラジオ体操をやっても、同じように受注できるとは思えないから参考にしようがなかった。

 その後も彼の新規受注は、提案内容とはまったく関係なく、ラッキーとしか思えないものばかりだった。

 私は、「なぜA君にだけ信じられないようなラッキーが起こるのだろう?」とうらやましく思っていた。

ある日突然、26歳で
超一流商社の子会社社長に

 A君とは3年間一緒に働いたが、最終的に彼は超一流商社の子会社社長として引き抜かれて転職していった。

 A君がたまたまベトナムに旅行に行ったとき、ある村で田植えをしているおばあさんがいた。

 おばあさんがモタモタしているのを見かねたA君は、田んぼにズカズカ入っていき、ズボンをまくり上げて手伝い始めた。

 しばらくすると、田んぼのそばを日本人一行が通りかかり、A君に話しかけた。

「君は日本人じゃないのか?何をしているんだ?」

「おばあさんがモタモタしているので手伝っていました」

「面白いヤツだな。今度、うちの会社はベトナムに進出する。手伝わないか」

 A君に差し出された名刺を見ると、誰もが知る超一流商社の社長だった。

 A君は26歳という若さで、超一流商社のベトナム子会社の社長に就任したのだ。

“たまたま”を“いつも”に変えると起こる
ラッキーの必然

 この話を聞いて私は、「そうだったのか!」とようやく気がついた。

 今まではA君が“たまたま”何かをやったときに、偶然、偉い人が見ていて気に入られたのだと思っていた。

 しかし、そうではなかった。

 彼は“いつも”やっていたのだ。

 彼はいつもモタモタしている人を見ると放っておけなくなり、代わりに手伝ってあげる。

 誰彼かまわずそうしていたので、100回に1回くらい偶然、偉い人の目に留まっていたのだ。

 私だっていつもA君と同じことをしていれば、100回に1回くらい、偉い人の目に留まっていたかもしれない。

 でも、私はやっていなかった。

 A君は誰に見られなくとも日頃からやっていた。

 差はここにあった。

 A君がラッキーなわけではなかった。

 A君のまわりにだけいつもチャンスがやってくるのではなく、誰にも平等にチャンスはやってきていて、彼はそれを「いつでも確実につかめる状態」にあったのだ。

「いざというとき」「大事なとき」だけ行動するのではなく、誰が見ていなくても日頃から礼儀正しくしたり、困った人を助けたりすることが、チャンスを確実にものにする近道だったのだ。

(本稿は『時間最短化、成果最大化の法則』の一部を抜粋・編集したものです)