くすぶり続ける結婚願望

 美紀子さんは、「いい人がいないかな」と思いながらも、今日もマッチングアプリを使っている。

「真面目な婚活アプリは変わった人しかいないと感じたので、出会いに特化したものを使っています。この2年間でそれなりにキレイになったので、いい男性も来るんです。20~30代のそれなりに素敵な男性と会っていると、『この人と付き合いたい』と思うんですが、距離を詰めようとすると断られてしまうんです」

 誰かと付き合いたい、結婚したいという願望がありながら、目の前のワンナイトを優先してしまう。マッチングアプリには背後の人間関係がないので、どれだけ奔放になっても人の目を気にしなくていい。

 それが利点でもあるが、歯止めが利かない沼にもなる。

「マッチングアプリをやめるか、くすぶり続ける結婚願望を消すか、どちらかを選ばないと後悔するとは思っているんですが、両方やめられません」

 そう話している間も、アプリには「いいね」がついたアイコンが光る。承認欲求を満たすこの通知が、沼の正体かもしれない。