お荷物の「楽天モバイル」に
求められていること

 ざっくりと構造を説明すると楽天グループのセグメント別収益は、楽天市場などで約580億円の黒字、楽天カードなど金融事業で約740億円の黒字をたたき出していながら、楽天モバイルが約3800億円の赤字を出しているのです。

 足元の構造としては、楽天本体の業績は実は堅調なわけですから復活するかどうかは、楽天モバイルが大幅な黒字化することができるかどうか次第です。

「なぜ大幅な黒字が必要なの? 赤字がなくなればいいじゃない」と思うかもしれませんが、インターネット通販と金融の黒字を投資しているのですから、当然投資家からはその投資を回収して巨額の利益が上がるレベルに育つことが楽天モバイルには要求されます。

 別の尺度を出しますと、ライバルである携帯3社の親会社はそれぞれ3社とも企業価値として10兆円前後の時価総額に到達しています。それに対して楽天の直近の時価総額は1兆円台まで落ちてきています。楽天の復活が「携帯参入前の時価総額を上回ること」を意味するとしたら、復活した時の時価総額は、4兆円は欲しいでしょう。だとすればインターネット通販、金融とモバイルの3事業合計で4000億円ぐらいの営業黒字は稼いでもらう必要があります。

 ということで決算発表の数字をもとに、楽天モバイルが大復活するためにはこの先、どのような展開が必要かを考えてみましょう。

楽天モバイル復活の鍵を握る
二つの数字

 実は今回の決算発表で楽天グループは楽天モバイルについて非常に重要な数字を二つ発表しています。一つは、ARPU(アープと読みます)が1472円だという数字です。

 ARPUはサブスク系のサービスを提供する会社にとって重要な指標で、一契約者から1カ月あたりでどれだけの収入が入ってくるかを示す数字です。携帯電話大手のドコモ、au、ソフトバンクのARPUはだいたい4000円台なのですが、携帯市場の民主化を掲げる楽天は安価なプランで参入しました。

 楽天のプランは3GBまでが980円、そこから20GBまでが1980円、それ以上なら2980円という価格設定です。日本人のスマホのデータ利用量は、ざっくり言うと2GB未満が約半数、2GB以上から20GB未満が4割、20GB超が1割といった構造なので、楽天のARPUが1472円だというのは、ほぼ妥当な水準です。今後オプション契約を増やすことでARPUを上げにいったとしても、楽天のARPUは1800円ぐらいが限界かもしれません。

 もうひとつ重要な数字は、無料プランがなくなったことで逆に課金ユーザー数が増えたという話です。楽天モバイルの契約者数は9月末時点で518万件と、0円プラン廃止前の6月末から28万件減っているのですが、逆に言うとこの518万件はまるまる課金ユーザーになっています。楽天の資料のグラフに定規をあててみると8月の課金ユーザー数がだいたい320万件ぐらいだったところから一気に増えているわけで、この数字が意味することは、「0円プランを廃止しても思ったほどユーザーは減らなかった」ということでしょう。