「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。

【仕事選び】「30歳でも50歳に勝てる職種」ほど失業リスクが高いワケPhoto: Adobe Stock

「サラリーマン組織」と
「プロフェッショナル組織」のちがい

 サラリーマン組織では、気力・体力が衰えた、先のない50歳より、これから新しい仕事を覚え、体力があり成長の余地もある30歳のほうが、企業にとっては使いやすく、戦力になる。企業の株価と同じで、時価でいえば、30歳のほうに高い値付け(年俸支払い)をしたいのが、企業の本音だ。だから転職市場でも、すべての業種で20代後半~30代前半のニーズが、50歳よりも高い。

 にもかかわらず、30歳より50歳のほうが2倍の年収であることが、大企業ではほとんどなので、企業は50代をポストから下ろし、退職を促す。それでも、やはり年齢が上になるほど、企業に膿はたまり、窓際族が発生しやすい。これは「労働条件の不利益変更」が判例法によって違法とされるなど、日本の法体系が減給に対して厳しいため、いったん上げた給料を下げにくいことも一因となっている。

 一方で、専門職組織(プロフェッショナル組織)は、むしろ年齢と実力が比例しやすい世界になる。専門職組織では、「追い出し部屋」もなければ、余剰人員のリストラも必要ない。経験値に応じて専門性が蓄積されていくため、組織に所属する必要がなくなったら、独立すればよいからだ。

「開業」「転職」で中年以上が
外に出ていく医局組織

 筆者が理想的だと思うのは、大学病院の医局組織である。次の図は、筆者が取材した都内私立大学付属病院の、小児科医局組織だ。

【仕事選び】「30歳でも50歳に勝てる職種」ほど失業リスクが高いワケ

 大学病院は、医学部と連動して医学生が学ぶ場でもあるが、各医局(内科、整形外科、小児科、外科、精神科、消化器内科、眼科……)単位で、1人の教授を頂点とするピラミッド組織が形成され、研修医→ヒラ→ヒラ(専門医資格取得)→助教→講師→准教授→教授と昇格していく途中で、地域の市中病院に派遣され、また大学病院に戻され、論文を書き、アカデミズムから離れる人はどんどん個人で臨床医として独立・開業し、または実家の医院を継ぐ形で、組織を離れていく。

 各大学病院で、同期が医学部全体で約100人おり、うち内科医局が20人と多く、それ以外は10~3人ほど。小児科なら1期10人×30年分の300人ほどが現役医師として活動している計算だが、医局には助教以下150人、講師15人、准教授5人、教授1人(+客員教授が数人)。これら全体の半数ほどを占める「医局ピラミッドに残る医師」は、地域の市中病院に数年単位で派遣され、転々と異動したり、大学病院に戻って臨床を続ける。

 残りは、40代半ばまでに、①開業または家業を継ぐため医局から離脱するか、②医局を離れ、医局の人事権が及ばない市中病院や中規模クリニック等にサラリーマン医師として勤務する道を選ぶ。

 大学病院の医局にずっと残るうえでは、『白い巨塔』のような権威主義的なドロドロした世界に巻き込まれることも多いが、それは民間大企業でもまったく同じ。重要な点は、辞めて開業したり、医局人事の及ばない病院に転職する、という「プランB」の太いキャリアパスが用意されていることだ。その結果、大学病院の組織は、綺麗なピラミッド状に保たれる。