(1)太陽の光を浴びる
 日照時間の短い時期はできるだけ屋外に出て、日光に当たること。仕事などの関係でそれが難しい場合は、自宅や仕事場の照明を明るいものに取り換えることも予防策になる。

(2)トリプトファンを含む食材を意識する
 過食は、セロトニン不足を補おうとする行為だと考えられる。このため、セロトニンの生成を促すトリプトファンを含む食材を意識することが大事だ。

<トリプトファンを含む食材>
肉類、魚介類(ブリ、イワシなど)、豆腐、のり、バナナ、牛乳、チーズなど

<トリプトファンの吸収を助ける食材>
ビタミンB6(マグロ、ニンニク、鮭、ゴマ、抹茶など)やビタミンB12(青魚、カツオ節、イカ、レバーなど)

 うつ症状が軽快すれば過食もおさまるので、無理に抑制したり、自己嫌悪感を持ったりする必要はない。

 また、

(3)ウォーキングなどの運動をする
 気分が落ち込んでいたり、イライラに悩まされていたりするときには、ウォーキングなどの運動が効果的だ。活発な運動によって、気持ちをコントロールする神経伝達物質の一つ「ドーパミン」が分泌される。日光のもとで早歩きすると、さらに効果的に。

(4)自分の感情を話せる人を見つけておく
 一人で悩んでいると、気持ちの落ち込みが余計に増大するため、気持ちを誰かに話してみることが大切。自分の気持ちを話せる相手がいなくても、誰かとおしゃべりするだけでも効果的。

(5)睡眠スケジュールを安定させる
 冬季うつ病の発生には「体内時計」の乱れも深く関係していると言われている。日照時間は体内時計を調整する作用があるため、日照時間が短くなる冬は、「時差ぼけ」のような状態に近くなる。(1)~(4)を意識した生活を送っても、睡眠スケジュールが不規則な生活だと何もかもが乱れてしまうことに。おおよその就寝時間・起床時間を決めて睡眠スケジュールを安定させよう。

 こうした対策をしても症状が改善しない場合や日常生活に大きな支障がある場合、治療が必要となる。

 治療は、通常のうつ病と同様に「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」や「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」といった抗うつ薬が中心となる。

 また、冬季うつ病患者の6~7割に効果があると言われているのが「高照度光療法」だ。毎日特定の時間帯に数千~1万ルクスの強い人工光を1時間程度浴びる治療で、冬季の日照不足を補う。

 そのほかネガティブな考えをポジティブな考えに置き換える「認知行動療法」も冬季うつ病の回復や再発予防に効果があるという報告がある。

「冬季うつ病は季節性とはいえ、長引くと1年の半分近くは調子が悪い状態が続き、睡眠が乱れたり、体重が増えたりするほか、仕事ではコミュニケーションがうまくいかず、生産性が落ちるなど生きづらさを感じます。寒くなってから気分が上がらない、寝ても寝ても眠いといった症状が2週間以上続くようであれば、精神科や心療内科への受診を検討してみてください」(工藤医師)

(文/中寺暁子)

AERA dot.より転載