ちなみに、ゾンビ企業の支援が労働力の囲い込みになるという批判とは反対に、頑張っている中小企業への支援を打ち切ることへの批判もあり得るだろう。しかし、それも景気が回復して労働力不足が懸念される状況では妥当とは言い難い。
労働力不足ということは、雇いたい企業の方が働きたい人よりも多いということであるから、誰かに我慢してもらう必要があるわけだ。そうであれば、効率的に経営をして利益を稼いでいる企業に我慢してもらうよりも、非効率な経営で赤字を続けている企業に我慢してもらう方が日本経済全体のためであろう。
仮に今後、新型コロナの再流行や海外景気の落ち込みなどにより日本の景気が悪化し、再び労働力不足よりも失業が問題となるようなことがあれば、本稿にかかわらず、ゼロゼロ融資の返済時期を先延ばしするといったことも検討されるだろうが、軽度な景気後退で失業がそれほど深刻にならないならば、予定どおりの返済で構わないように思われる。
本稿は、以上である。なお、本稿はわかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。