中国の時刻表と日本の時刻表の違い

 ところで、日本語版は中国の時刻表と大きく異なる部分がある。中国では目的地別に編集されていたが、日本ではそれを彼ら自身が独自に開発したシステムを使って改良し、すべて路線別、発車時刻順に組み替えたのだ。何氏は「中学生の時から、そうしたらもっと分かりやすくなると考えていた」そうで、日本式に編集することによって、実際に、格段に見やすくなり、乗り換えなども調べやすくなった。

日本式に並べられた時刻表時刻表は日本式に並べてあり、見やすくなっている(筆者撮影) 拡大画像表示

 2人とも東大大学院で都市交通システムなどを研究していたが、さらに別の分野を専門とする有志も加わって、編纂されてきた中国鉄道時刻表。創刊号から8年たち、今では中国でも注目される存在となっている。冒頭にも書いた通り、中国では紙版の時刻表は2016年に廃止された。インターネットが普及したこと、猛スピードで拡大する路線に紙版が追いつかなくなったこと、収益面などが大きな理由だと考えられる。しかし、「本家・中国でなくなったものをなぜ日本で?」と中国メディアからも取材を受けるようになってきた。当初はネットで発着時刻さえ調べられればそれで十分だ、と思っていた読者からも「目が見開かれたようだ。読んでいて楽しい」と評価されるようになった。2021年に同研究会がサイト上で公開した「中国鉄道都市間所要時間マップ」も「中国にはなかったもの。分かりやすい」と中国の鉄道ファンに注目された。日本留学経験もある、北京交通大学電気工程学部の楊中平教授は、最新号の中で次のように語る。

一目で分かる所要時間マップ日本で作成した、一目で分かる所要時間マップ(提供:中国鉄道時刻研究会) 拡大画像表示

「東大の学生たちが立ち上げたサークルが編纂した中国の時刻表を手に取り、感動を覚えました。日本留学時代に親しんだ日本の路線別、発車時刻順に組み替えされていることにも気付きました。個人旅行が趨勢(すうせい)になるこれからの世代にとって、この一冊は中国旅行の良き友になるかと思われます」