相手をいつの間にかデジタル化
してしまう「魔法の言葉」
コロナ禍で一気にデジタル化が進んだとはいえ、今も県内の多くの企業が電話やFAX、メールを中心に業務を進めている。
鷲谷さんには秘策がある。
「お客さまには、『当社は、育児や介護などの事情があっても働き続けられるよう、ITを活用しています。そんな当社がご支援させていただくには、リモートでもご迷惑をおかけしないよう、チャットやオンライン会議ツールが必要なんです』というお話をさせていただきます。するとお客さまは、何かを変えるとか、無理やりやるという感覚ではなく、『ケイリーパートナーズさんのためにやってあげる』という感覚で、チャットやオンライン会議ツールを使い始めるんです。『ありがとう』と言われて嫌な気持ちになるお客さまはいませんし、使い始めてしまえば皆さんすぐに慣れていきます」
顧客の中には、「子育てに忙しい女性がやっているというから迅速な対応を期待してはいけないと思っていたけれど、すごくレスポンスが速いですね」と驚いてくれる人もいるという。そんなときは、「皆さまのご協力のおかげでチャットを使わせていただけているからです」と感謝の気持ちを伝えている。
「あの会社でやってるもんね、
だからきっと、できなくはないんだよ」
働きたい人が、働くことを諦めなくていい社会になったらどんなに素晴らしいことか。頭では分かっていても、企業の人事運用を変えるのは難しい。経営者にも覚悟が要るし、社員の協力も不可欠だ。それがライフスタイルの違う誰かの犠牲の上でしか成り立たないのであれば、軋轢(あつれき)を生むことにもなりかねない。
鷲谷さんの次なる目標は、ケイリーパートナーズが実践する柔軟な働き方、チームづくりを他社でも取り入れやすくすることだ。現に最近、ケイリーパートナーズが支援する企業で、1日3時間から働けるという採用枠ができた。
「前は『うそでしょ、1日2時間で何ができるの?』ってみんなに言われたんですよね。今はそんなことありません。『あそこの会社でやっているもんね』と言ってもらえるようになったんです。『だからきっと、できなくはないんだよ』って」