働きたくても働けない女性がこんなにいるのに、
経営者は皆「人手不足」と嘆く
これを機に鷲谷さんは、子育て世帯の支援や通訳ガイド、まちづくりと、ボランティア活動の幅を広げていった。その中で、同じく子育て中の女性たちと接する機会があった。
「みんな同じように悩んでいました。震災から数年たってやっと『それでもやっぱり働きたい』と思えたのに、ブランク意識が強くて一歩踏み出せないという女性が多かったのです」
初めはただ共感していた鷲谷さんだったが、まちづくりを通して地域の経営者たちと話をするようになると、それが強烈な課題感に変わっていった。
「経営者の皆さんは口をそろえて『人手不足』と言うんです。すぐ隣に、働きたくても働けない女性がこんなにたくさんいるのに」
「私自身、会社員時代は長時間労働が当たり前で、そうしないと回らない会社の事情も、休日出勤もいとわず対応できる人が評価されるということも分かっていました。育児をしながらではそういう働き方を続けられないから私は専業主婦になったわけで、私にとっては経営者の課題も女性がキャリアを形成する難しさも両方自分事でした。そんな私だからこそ、両者をつなぐビジネスができる気がしてしまったんです」
1日2時間なら、無理に環境を変えることなく新たな一歩が踏み出せる。鷲谷さんは、これを屋号にすると決めた。
「女性活躍推進の旗振り役をするつもりはありません。人手不足なら、地域に埋もれている力をしっかり活用しようという話です。まずは私たちが柔軟な働き方、新しい組織のあり方の実例を示し、地域の企業が取り入れやすい形で広めていきたいです」