大手マスコミを信じ込みやすい日本人がパニック
実は日本では、この手の「不安」を刺激されるような報道に過剰に反応をした人が、恐怖で冷静な判断ができずパニックになって、事態を悪化させてしまうケースが多い。わかりやすいのは、「トイレットペーパーデマ」だ。
忘れてしまった人も多いだろうが、新型コロナウィルスの感染拡大当初、SNSで「トイレットペーパーが品切れになる」という情報が拡散されたことがある。ほどなくデマだとわかって、拡散した人物が所属していた団体も謝罪し、一件落着となった。
しかし、ここで思わぬ事態が起きる。ワイドショーなど大手マスコミが「SNSでトイレットペーパーが品切れになるというデマが流されました」と大騒ぎをしたことを受けて、トイレットペーパーの買い占め騒動が起きたのだ。番組を見た視聴者は頭では「デマ」だと理解しているが、「もしかしたら本当に品切れするかも」と不安になって、ドラッグストアに押し寄せたのである。
そして、それをまたワイドショーが中継をして、「ご覧ください!あんな行列ができています!」と大ハシャギで報じて、それを観た視聴者が「乗り遅れてなるものか」とさらにドラックストアへ殺到…という悪循環となったのである。
なぜこんな不可解な現象が起きたのかというと、「報道」が群集心理をあおったからだと言われている。
実は、著名人や人気芸能人の自殺報道を朝から晩まで流すと、熱心なファンではない人まで後追い自殺をするという現象が世界中で確認されている。これは「アナウンス効果」と呼ばれるもので、WHO(世界保健機構)が報道機関に自制を求めているほど「効果」がある。
もうお分かりだろう。この「アナウンス効果」と同じことが、「トイレットペーパー・パニック」で起きたのである。
「マスゴミ」などと批判されることも多いが、実はマスメディアというのは、それくらい人々の行動にダイレクトに影響を及ぼす力を持っている。
特に日本人は先進国の中でも、異常なほどテレビや新聞を信用しているという国際比較調査もある。ほとんどの国では、マスコミというのは「偏向」して当たり前なので、受け取り手側が情報の真贋を見極めなければいけないと考えている人が多いが、日本人はなんやかんや文句を言いながら、「テレビや新聞は嘘をつかない」と頑なに信じているのだ。