うまく思考が広げられないときは、あえておおげさに捉えなおし、社会的な意義や本質的な意義に意識を向けてみるのもおすすめだ。社会にはものがあふれている。大量生産、大量消費、そして大量廃棄の時代は、SDGsに注目が集まる現代でも収まる気配がない。本当に地球のことを考えるならば、何も作らないのが一番だが、企業としてはそうもいかない。ならば、商品により価値をのせた上で値付けをしていく必要がある。これからの企業は、できるだけ作らずにブランドや商品の価値を認めてもらう活動に移る、というのが考え方の前提となるだろう。

◇感情を抜きにして考える

 人はサンクコスト(もはや回収できない費用)の影響で誤った判断をしてしまうことがある。これを「サンクコスト効果(サンクコストの誤謬)」という。会社のプロジェクトなどでも思い切って辞めるという決断ができず、「ここまでやったのだから最後までやるべきだ」という結論になることが多い。

 だが、分解思考を使えば冷静な議論が可能だ。著者が相談を受ける際、やり続けることにこだわっている人は「去年決めたから」「みんなと約束したから」と、効果を評価し判断するという視点が欠けていることがある。分解して考える際は、事実をベースにフラットに物事を見なければならない。気持ちのバイアスがかかると正しい分解ができなくなってしまう。感情的な部分は別にして思考する習慣をつけておきたい。

 1つの方法しか考えられなくなったり、他にアイデアが出なくなったときは、好き嫌い・得手不得手・手間の大小などで考えていないかふりかえってみよう。自分の気持ちが正しい分析を阻害していたことに気づけば、より広い視点でアイデアが出せるようになるはずだ。

◆解像度を上げる、日々の習慣
◇社外に情報を発信する

「考える」作業は、一人で行う必要はない。特に重要なのは、社外の人と意見交換することだ。毎日社内の人とだけ話していると、考え方のベースが社内の理屈になってしまう。自分が立てた仮説や発想をどんどん発信し、社外の人に意見を求めてみよう。SNSを利用すれば、案外簡単に100人くらいの人と日常的に意見交換することが可能だ。100人くらいから意見をもらえれば、そのトピックに対する世間一般の反応が見えてくる。