実際にSNSの投稿を見ると、「娘が通学中に、仁王立ちしている人からいきなり体当たりされた」「ガラガラの電車内に座っていたのに足を踏まれた」といった体験談も投稿されていた。
もちろん、「ぶつかる側」には、駅が混雑する時間帯にうっかりぶつかってしまったという人もいるだろう。だが、なかには接触後に謝罪もなく歩き去っていく人もおり、「ぶつかること」自体を目的にした人もたしかに存在する。
そもそも見知らぬ人に「ぶつかる側」の人たちは、どんな心理状態から行動に至るのか。心理カウンセラーの近藤あきとし(https://kondouakitoshi.blog.jp/)氏は、「いきなりぶつかってくる人はネガティブな感情を長らく抱えている場合が多い」と解説する。
「ネガティブな感情のなかでも、主に二つの感情が大きく影響しています。ひとつは、常日頃からたまっている不平不満や劣等感。部下や上司から思うような評価が得られていない人、抑圧された環境で立場的に意見できない人などが当てはまります。こうした人は、たまったストレスの分だけ、負の感情を発散したいと思ってしまう。『普段は自分には自由がないから、歩行時くらいは世界の中心にいるかのように我を通したい』という思考を体現し、他者にぶつかっていくと考えられます」
もう一つ、「ぶつかる側」には、日頃から過剰な我慢を強いられているタイプがいるという。
「『自分は我慢している』という自覚すらなく、常に気遣うべき相手のことばかりを考え、知らぬ間に余裕がなくなっているタイプです。しかし、過剰なストレスを抑え込むには、相応のパワーが必要になります。たとえば心の4割を怒りの感情が占めていたとして、それを抑え込むには同じ4割の力を使う。すると、残り2割の心の余白では、ほかの歩行者を気遣うには不十分です」
心の余裕がなくなると、ほかのことを考えたり、ものごとに集中することが難しくなるもので、会話中でもボーッとしてしまうほどの人もいるという。そのため、他者を攻撃する意思はなくとも、自分の心の余裕のなさから歩行中の周囲への注意力が低下し、ぶつかってしまっている可能性も考えられるようだ。